「ゲームは悪なのか?」 学校行事としてeSports大会実施

「ゲームは悪なのか?」 学校行事としてeSports大会実施
PCゲーム「ロケットリーグ」に挑戦する生徒=提供:広島桜が丘高校
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 ゲームは悪なのか━━。広島市の広島桜が丘高校(安藤正晴校長、生徒677人)はこのほど、同校体育館で1・2年生の生徒487人を対象に、学校行事として「eSports大会」を開催した。同校では非認知能力を育成するために「eSports」を取り入れた教育を行っており、同大会は総合的な探究の時間の一環として行われた。実行委員の生徒らは「誰もが楽しめるゲームを選ぶなどして、みんなが楽しめる行事ができた。全国的にも認められるような大会にしていきたい」と充実感をにじませた。

 同校では、自信・向上・探究・受容・疎通・協調&協働の6つの非認知能力を育成するために「eSports」を取り入れた教育を行っている。1年生は1年間、「ゲームは悪なのか?」という仮説を基に、総合的な探究の時間に取り組んできた。当初はそのアウトプットの場として、1年生のみでeSportsイベントを実施予定だったが、1年生から「2年生も巻き込んで、学校行事として取り組んでみたい」との声が上がり、実行委員32人が中心となり、1・2年生の学校行事として「eSports大会」が開催された。

 大会では、それぞれの生徒が自分の得意や好きを生かして参加できるよう、PCゲーム「ロケットリーグ」、iPadゲーム「ゴッドフィールド」「テトリス」の3つのゲームを用意。クラス対抗で上位を競った。

iPadゲーム「ゴッドフィールド」に取り組む生徒ら=提供:広島桜が丘高校
iPadゲーム「ゴッドフィールド」に取り組む生徒ら=提供:広島桜が丘高校

 実行委員長を務めた1年生の井口林太郎さんは「誰一人取り残さず、楽しめる行事にするために、ルールが簡単なゲームを選んだ。分かりやすくルール説明をして、苦手な人や興味がない人にも積極的に参加してもらえるように工夫した」と話す。会場となった体育館では、実行委員がマイクで実況するパフォーマンスもあり、生徒らが盛り上がった。

 副委員長を務めた1年生の織田楓さんは「例えば運動会はスポーツが得意な人が活躍してきた。eSports大会ではゲームが得意な人が活躍できる。新たな得意が見つかったり、輝けたりする人が出てくるのではないか」と、学校行事として取り組んだ理由を語る。

 大会の実施までにはたくさんの試行錯誤かあったといい、桐原琢副校長は「1年生はこのような大きな行事をゼロからやるのは初めてだった。運営面でどういう準備が必要なのかが分からず、後手に回っているところもあり、教員はハラハラしながら見守っていた。生徒たちを信じて待つことと、サポートすることの加減が難しかったが、実行委員を中心に本当に頑張ってくれた」と振り返る。

学校行事を振り返る実行委員長の井口さん(左)と織田さん=オンラインで取材
学校行事を振り返る実行委員長の井口さん(左)と織田さん=オンラインで取材

 井口さんは初めての学校行事の運営について「運営する人数も足りなかったし、もう少しうまく振り分けられたらよかった」と課題を振り返る。織田さんは「初めての取り組みだったので、最初はクラスの中でも反対派がいた。eSportsが苦手だったり、嫌いだったりする人には、その人の得意なことが生かせるような役割を割り当てるなどして、もっとみんなが楽しめる学校行事にしたいし、全国的にも認められるような大会にしていきたい」と意気込みを語る。そして「ゲームは悪なのか?」の問いには、「使い方によってゲームは悪にもなるけれども、今回の学校行事では、みんなの個性が輝くゲームを選ぶなど、そうではない使い方ができたのではないか」と話した。

 桐原副校長は「eSportsを通して相手を受け入れたり、うまく意思疎通ができるようになったりするなど、生徒に成長が見られた。コツコツ努力をすればゲームもうまくなり、自信を付けた生徒もいた」と話す。「今までスポットライトが当たっていなかった生徒にも光が当たるような、新たな学校行事になったのではないか。総合的な探究の時間のアウトプットの場として、本校の伝統にしていきたい」と展望を語った。

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