公立学校の教職員のメンタル対策に関し、文部科学省が進める調査研究事業の最終報告会が3月25日にオンラインで実施され、5自治体がモデル事業の成果や課題などを報告した。学校現場に任せきりだった病気休職者の支援について産業医など専門的人材を活用する体制に見直したほか、オンラインを活用した相談窓口や研修を取り入れるなど、多くの自治体で既存の取り組みから改善が見られた。一方で、相談窓口を設置しても利用者が少なかったり、業務改善など抜本的な取り組みが求められたりなど、一筋縄でいかない様子も伺えた。
報告会では今年度モデル事業に取り組んだ、沖縄県、千葉市、神戸市、宮城県白石市、大阪府枚方市が登壇。
神戸市では特別支援学校の教職員の病気休職者率が高いことに着目し、メンタルヘルス対策に着手。市内の特別支援学校6校の教職員を対象に、産業保健コーディネーターが各校を訪問し、グループワークを交えた研修を実施した。現場からは来年度も継続してほしいと要望があったほか、個別の相談につながったケースもあったなど高評価が得られたという。
市では、特別支援学校の病気休職者率が高くなる要因について、他校種と比べて職員数が多いことや、看護師など専門職の職員も多く、複数の関係者と密な連携が求められることに着目。産業保健コーディネーターが事前に管理職から丁寧にヒアリングした上で現場が求める研修を実施できた点や、普段交流をもたない職員ともグループワークを通してコミュニケーションを図れた点などが高評価につながったと分析した。
一方、精神疾患の病気休職者率が全国ワーストの状況が続く沖縄県では、那覇市の小中学校を中心にオンラインを活用した相談や研修の実施、既存の復職支援プログラムの改善などに取り組んだ。
また現場へのアンケート結果を、専門的人材が分析し実態把握に努めた。その結果、病気休職者には50代のベテラン層が特に多いことや、適応障害が多く職場環境に要因を抱える教職員が一定数いる可能性が読み取れた。また、病気休職者が特に多い学校を訪問調査。その結果、メンタルの不調は本人の問題として捉えている校長が多い傾向や、休職者の対応に不安を感じる管理職が一定数いるなどの課題が見えてきたという。
さらに県はメンタルヘルス対策について、働き方改革の観点から業務改善とともに一体で取り組む重要性を強調。来年度から具体的な取り組みに反映するなどと報告した。