教育センター研究調査部では教職を目指す大学生が、市内の幼稚園や学校で、通年で教職体験ができる「なごや教職インターンシップ」を実施しています。参加学生同士の交流や情報伝達を目的とした集合型のサポート講座も年3回実施します。先日、その最終回でした。毎回行ってきたグループ対話では、学生たちは活動の経験を基に、学んだことや教職への熱い思いをキラキラした眼で語り、笑顔でうなずきながら仲間の話を傾聴していました。5月の第1回では自信なげだったのに、経験によって人はこんなに成長するのだと感動を覚えると同時に、学びの場に対話の場面を設定することの重要性を実感しました。キラキラの眼も笑顔のうなずきも、空間と時間を共有するからこそ生まれるのだと思います。
コロナ禍、教育センターの事業は、非集合・非対面への転換を余儀なくされました。GIGAスクールのタブレットを最大限活用して乗り切ったとも言えますが、子どもたちの学び同様、先生方の学びにとっても、会えないこと、対話できないことは大きな痛手でした。今年度、制限が緩和され、研修での対話場面が復活しました。受講後のアンケートは、「話し合いができてよかった」「協議の時間がもっと必要」など、対話場面についてのコメントが目立ちます。動画視聴の研修でも、「直接聞きたかった」「質問できないのが残念」など、集合型を望む声もあります。集まること、対話することを欲している先生は結構いると感じました。人が前向きに生きるには対話が不可欠で、対話するために人に会いたくなるのかもしれません。対話というものは、相手の価値観を見いだし、自分の考えを深めることができ、何よりも人との信頼関係を築くことができるよさがあると私は思います。
話は変わりますが、1人1台タブレットが整備され、会えない人とつながることができるようになった点やオンライン授業が可能になった点には、大きなメリットを感じます。しかし、会える人とは直接対話した方が絶対に良いと思います。その証拠に、感染症防止による制限がなくなった今、オンライン授業が主流として継続されることなく、対面型の授業に戻っています。こうなったのは、会って対話することの大切さにみんなが気付いているからだと思います。同じ教室にいる先生と子ども、同じ学校の職員、同じ家に住む家族。簡単な会話や情報共有はスマホやタブレットの方が便利な場合もありますが、対話もそれで済ませようとしていたら結構恐ろしいことです。子どもたちや同僚、家族など、毎日会える人ときちんと対話できているか、簡単な会話や情報共有をしただけで対話したつもりになっていないか、時々振り返ることが大事だと思います。
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「学校は、夜に作られる」
もう25年以上前に、夜の職員室で聞いた先輩の言葉です。当時、夜の職員室は対話・議論の場でした。私が先輩に相談に乗ってもらった場は、人が少なくなった職員室か飲み会。職場の仲間との対話で明日も頑張る力がもらえたのは、確かにほとんどが夜でした。今の時代、終業後に対話の場や半強制的な飲み会を設定するなんて論外という考え方も普通です。以前より時間の使い道がシビアになったということです。ですから、対話の時間は自ら作り出す意識がないと生まれません。ぜひ意図的、積極的に対話の時間を生み出しましょう。
(中川力・名古屋市教育センター研究調査部長)