(一財)教育調査研究所が主催する「第40回調研セミナーin名古屋」(協賛:教育新聞愛知支部)が3月9日、ウィンクあいち(愛知県産業労働センター)において開催された。「変革の時代の学校教育を展望する~次期指導要領を見据えて~」をテーマに教育講演、パネルディスカッションを通して、「主体的・対話的で深い学び、個別最適な学び」の取り組みなどについて理解を深めた。会場には31人、Zoomライブには145人が参加した。なお、今回、より視聴しやすいようにするため3月15日から25日までウェブ配信期間を設けた。
2020年、新しい学習指導要領が小学校で全面実施されてから4年が経過した。今、学校現場では「主体的・対話的で深い学び」「個別最適な学び」と言われるような、教師主導から学習者主体へと授業改善の取り組みがなされている。
本セミナーでは、これらの取り組みに次期指導要領を見据え、これからの学校教育を展望する。
◇ ◇ ◇
はじめに、前文部科学審議官の伯井美徳氏より「これまでの学校教育・これからの学校教育」と題して教育講演がなされた。
学習指導要領の変遷を中心に、「学力低下への対応」や「個別最適・協働的な学びの実現に向けた学びの改革」など教育施策について語った。
■令和の日本型学校教育
〇子供の学び
一人一人の子供が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重することが求められる。
・主体的・対話的で深い学び
・個別最適な学び
・協働的な学び
〇教職員の姿
・資質・能力の向上
・多様な人材の確保
・教職の魅力発信
〇子供の学びや教職員を支える環境
・ICT環境の整備
・少人数によるきめ細かな指導体制
■GIGAスクール構想
〇進捗状況と効果
・世界に先駆け、1~2年で整備完了
・教科書・教材のデジタル化も加速
・働き方改革にも寄与
・活用頻度の高い学校ほど、校長の効果認識が上がっている。
・GIGA前後でプログラミングサイトの利用者数が3倍に増えた。
〇課題
・格差の是正
・使い勝手の向上
・学習効果の見える化
・端末更新の財政負担
■新たな教師の学びの姿
〇質の高い教職員集団の形成
〇教職志望者の安定的な確保
■学校における働き方改革と環境整備
〇今後、5年程度をかけて端末を計画的に更新する。
続いて、千葉大学名誉教授の天笠茂氏より「主体的な学びを創造する―授業の改善、学校の改革―」と題して教育講演が行われた。
■変革の時代をどう捉えるか
〇「令和の答申」が捉える変革の時代とは、予測困難な時代であり、社会が「非連続」に劇的に変わる時代である。
〇「変革の時代」の主役はICTである。
〇変革の時代のキーワードは、「誰一人取り残さない」「主体的に学びを深める」ということがテーマとなる。
■探究的な学習の過程を学ぶ
〇初期に設定した課題が、探究の過程(課題の設定↓情報の収集↓整理・分析↓まとめ・表現)を通して新たに更新されること。
■対話を通しての学び
〇他者との対話を通して探究の質を高め、課題の解決の道を開く。
■学習者自身によるカリキュラム・マネジメント
〇学習者が学習の目的や目標の実現を目指し、学ぶテーマや内容・方法について学習計画を作成し、必要なリソースを調達して学ぶ環境を整える営みとして捉えることができる。
■学習者と指導者
〇学習者に伴走する。
〇変革の時代に求められる学びは、ビジョンと戦略を持った自律的・主体的に変わろうとする学校から生まれる。
〇学校の風土を「見える化」を通して、学校をみんなが安心して学べる場所にする。
◇ ◇ ◇
後半では、伯井氏、天笠氏をパネリストとしてパネルディスカッションが行われた。コーディネーターは(一財)教育調査研究所研究部長の寺崎千秋氏が務めた。
〇学習指導要領は、これまで左右に揺れ動いてきたが、一貫して貫かれたものは何か。
〇将来の見取り図として、今後デジタルとアナログの関係はどうなっていくのか。
〇「主体的な学びを最適化する」ためには資源が必要となる。カリキュラムに落とし込む場合時間という資源をどう生み出していくのか。
〇「個別最適な学び」は、発達段階においてどのように受け止めればよいのか。
〇経済界からの提言「これまで一律一斉型の授業を通じて、金太郎飴的な人材を育成する傾向にあった」に対して、大いに反論してほしい。
〇授業のありようが大きく変わろうとする今、これまでの授業研究の蓄積を大切にしてほしい。
明日からの実践につながる有益なセミナーとなった。