本校の正門の前に押しボタン式の信号がある。交通量の多い道路を横断する生徒のために20年ほど前に設置された。
朝、正門に立っていると、生徒がその信号を横断してくる。生徒が横断した後、誰も通らない横断歩道の前で、自動車が青信号に変わるのを待っている。信号が変わるまでに約30秒。ちょっとした時間だが、朝の忙しい時間の運転手の気持ちを考えると心が少し痛む。
生徒や歩行者の安全のためには、ありがたい信号であるが、もし、この信号がなかったら…。
横断者が渡り終えたら、車はすぐに出発できる。無駄な待ち時間はなくなる。しかし、横断者がいても、車は止まってくれず、横断するのに時間がかかることもあるだろう。時には、危険な場面があるかもしれない。だから、この信号があるのだ。
もしも、運転手も横断者も思いやりの心をもって、譲り合うことができたら、お互いに無駄な時間を費やさなくてすむのではないだろうか。
昨年度から、本校では生徒が中心となって校則の見直しを進めている。安心して学校生活を過ごすことができるようにという目的で、真剣に議論してくれている。細かなルールを決めることも大切なのかもしれないが、一人一人が自分本位で考えるのではなく、お互いの気持ちを思いやって行動できれば、やたらに細かなルールは必要なくなるのかもしれない。
ルール作りを考える中で、子どもたちの心が育ってくれることを願っている。
(葉山靖彦・刈谷市立刈谷南中学校長)