今、学校にはICT教育やプログラミング教育など新たな教育活動に期待が寄せられています。その一方で、教員の勤務時間が増加している実態もあります。県では、「働き方改革ガイドライン」を策定し、学校の業務改善への取り組みを促している。あなたは教頭として学校の教育力を低下させることなくどのように業務改善に取り組みますか、具体的に述べなさい。
愛知県教育委員会は、2019年3月に「学校における業務改善の手引」を、5月に「県立学校における働き方改革ガイドライン」を公表した。管理職は教職員の業務量を適切に管理し、健康的に働ける環境づくりにこれまで以上に可及的速やかに取り組む必要がある。
本テーマは、「新たな教育活動への対応」、前述の手引などを踏まえた「働き方改革」と「業務改善」を、「教頭として」「具体的に」述べることを求めている。
そこで、業務量と負担感の軽減、効率的・効果的な教育活動の創造、組織的・計画的な人財育成を視点に「学校評価の工夫」「協働体制の強化」「ICT機器の活用」を柱にして論じることとする。
保護者・地域のニーズや社会の要請が多様化し、学校が果たす役割が拡大する中、教職員の長時間勤務の改善は急務の課題である。それは、教職員が心身ともに健康で子供と向き合い、職務を着実に遂行し、教育の質の向上と新たな教育課題に取り組むためには、時間の確保が不可欠だからである。
この考え方に立ち、現在の学校現場には、常勤・非常勤などの多様な働き方をする教職員が在籍していることを踏まえ、私は教頭として校長の指導を仰ぎながら、次の3つを柱に業務改善を進め、全ての子供たちにとって価値ある教育を推進する。
業務改善と教育の質の向上のためには組織的・計画的な取り組みが必要であり、PDCAサイクルによる学校行事などの改善を図りたい。具体的には、従前の評価項目にタイムパフォーマンスとカリキュラムマネジメントの視点を加え、目的に対するC・Aを協議する場を設けるよう教務主任に指示する。短時間でも教職員が対面し協議することで「練習時間を削減し、早い時期から指導を重ねる」「カリキュラムマネジメントにより効果的・効率的な指導計画にする」などの改善案を引き出す。改善案は直ちに次年度実施計画案の改善に反映させる。このC・Aを累積することで年度末の教職員による学校評価はより意味を持ち、業務改善と教育の質の向上につながる。
一方、この改善には保護者や地域の理解と協力が欠かせない。そこで、学校関係者評価の結果から、改善の重点を明確に発信し、地域ぐるみで子供を育てることへの理解と協力を得ることに尽力する。
学校現場では、教職員の年齢構成や経験年数のバランスが変化し、多様な働き方をする教職員が在籍している。そこで、学校運営組織の構成・校務分掌では、ベテランと若手、中堅と若手でチームを編成し協働体制をつくる。これにより若手は業務を一人で抱え込むことなく、見通しをもって立案し、効果的・効率的に実践するためのスキルと考え方を学べる。ベテランや中堅は、若手の支援などを通して力量が高まる。
校内授業研究会では、ICT教育などの新たな教育課題をテーマにし、協働体制で進める。具体的には、教務主任に指示をし、学年職員で授業者の授業づくりと実践を協議・支援する場を計画させる。さらに、授業研究の協議事項を事前に全教職員に周知させ、授業者の力量向上につながる助言や次年度の授業実践に活用できる成果と課題を明確にさせる。また、当日参加できない教職員のために、授業や協議会の様子を動画で記録しておく。
日々の業務に対する教職員の意識改革を図る。具体的には、タブレット端末の活用である。使う指導から使いこなす指導への転換、子供が筆記用具と同等レベルで常に、すぐに授業で活用できるような授業改善を図る。このように活用できれば、子供が自らの力を、自らで高めていける。また、教師が事前に授業に必要な全ての資料を準備し、子供に提示するという負担も軽減される。こうしたパラダイムシフトが定着すれば、授業の質の向上と業務改善が図られる。
一方、ICT機器は、学年・学校だよりの保護者へのメール配信、学校評価やいじめなどに係る調査で活用する。印刷や集計に係る負担が軽減し、その時間を調査結果の考察や子供との面談に活用できる。また、子供の欠席などの連絡をメールに変更する。毎朝の電話対応への担任の負担が軽減される。このような活用方法を積極的に導入していく。
以上の取り組みにより、業務改善と教育の質の向上を図っていく。一方、人により、時期により業務の負担感などの感じ方が大きく異なることには十分に配慮する必要がある。
私は教頭として、教職員が相談しやすい関係づくりに留意し、全ての教職員が心身ともに健康で、教育への使命感を強く持ち、生き生きと働くことのできる職場環境づくりに全力を注ぐ所存である。