コロナ禍により、今まで当たり前に過ごしていた学校生活が、当たり前ではないことに気付く日々。こうした状況の中で「今やらなければ、吉良中の伝統が途絶えてしまう」という危機感のもと、生徒会が中心となって「新たなる全力校歌」を考え、動き出した。自分たちで伝統をつくっていこうとする姿は、「今」を大切に、精いっぱい生きる姿であり、輝く姿そのものであった。
仲間と二度とない「今」を主体的に生きることは、輝く未来を自ら切り開く大きな力につながる。日々の実践において、「もっと知りたい・聴きたい・話したい」という追究意欲を高める授業をしていくことで、生徒が学ぶ楽しみを知り、新しい課題を見つけ、自ら学び続けていくと考え、上記の研究主題を設定した。
本研究の仮説を「生徒の思いを大切にした課題解決を図る授業を実践すれば、『もっと知りたい・聴きたい・話したい』という追究意欲をもって、自ら学び続ける生徒が育つだろう」とした。そして、(1)生徒の振り返りをもとにした課題づくり(2)座席表や板書、ICT機器などによる考えの可視化、(3)意図的指名――による考えの揺さぶりの3つの手だてを講じ、実践に取り組んだ。
【教材について】
中学3年社会科公民分野「地方自治」の単元では、地域教材である「名鉄にしがま線」を中心に取り上げ、追究した。「名鉄にしがま線」は、利用者数の減少から赤字路線となっている。市や市民の働き掛けにより、2025年度まで存続することになっているが、その先はまだ決まっていない状況だからこそ、取り上げる価値があると考えた。今後も存続させていくために何ができるか考えていくことで、地方自治の発展に寄与しようとする住民としての自治意識の基礎を育てることができると考えた。
【生徒の振り返りをもとにした課題づくり】
前時までの振り返りをもとに、「まちづくりを支えるにしがま線にするためにはどうするとよいか」という学習課題づくりを行った。自分たちの考えを市に提案するということで、「やってみたい」「もっと詳しく知りたい」という声が出てきた。
【座席表、ICT機器などによる考えの可視化】
課題追究で行き詰まったときに、座席表などによる考えの可視化を行ったことで、「どうしてそう考えたのだろう」「なぜそれを根拠にしたのだろう」という疑問が生まれ、「聴きたい」という追究意欲を高めることができた。
【意図的指名による考えの揺さぶり】
市役所への提案を絞る段階で、座席表を再度見つめ直している生徒Aを指名したところ、「まだ話を聴けていないグループがある。自分たちの提案について考えるために、もう一度話を聴いてみたい」と発言した。生徒Aの発言によって、揺さぶりをかけられたことで、考えを再構築する必要性を感じ、「誰かと話したい」「相談したい」といった追究意欲をさらに高めることができた。
今後も、私たちにしかできない、今の私たちだからこそできることを模索し、二度とない「今」を大切にしながら生徒や同僚とともに精いっぱい挑み続けることで、若竹のごとく伸びていく生徒と教師の姿を目指し、研究を推進していきたい。
(文責・兼子明校長、執筆・髙原剛研究主任)