次期指導要領では金融経済教育の充実を 識者らの研究会が要望書

次期指導要領では金融経済教育の充実を 識者らの研究会が要望書
iStock.com/Varijanta
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 投資や資産形成などについて学ぶ「金融経済教育」の学校現場への普及に取り組んでいる「金融経済教育を推進する研究会」(事務局・日本証券業協会)は4月4日、こうした教育を一層拡充するよう求める要望書を文部科学省に提出したと発表した。現行の学習指導要領では資産形成に関する学習内容が増えたものの、同研究会が実施した調査の結果、教員の知識や指導体制、生徒の理解などの面で課題が見られたと指摘。次期学習指導要領では、投資の意義や役割に関する学習を一層充実させるとともに、担当教員を養成する段階で経済学の知識を身に付けてもらったり、お金や金融などの知識を体系的に学べる教科の新設を検討したりするよう求めた。

 同研究会は2013年度、金融を専門とする大学教員や中学校、高校の現場教員が中心となって発足した。投資活動は経済活性化や雇用創出を通じた社会貢献につながる上、資産形成を通じた豊かな人生設計にも役立つものだとして、中学校や高校段階での金融経済教育の必要性を訴えてきた。

 文科省によると、現行の学習指導要領では、高校家庭科などで資産形成に関する内容の充実が図られた。ただ、同研究会が21~22年度、現行の学習指導要領の下で約1年間学んだ中学3年生と高校1年生の生徒計約1万人に対し、家計の預貯金や投資が持続可能な社会づくりや経済成長につながっていることを説明できるかどうかを尋ねたところ、「全く説明することができない」「ほとんど説明することができない」との回答が中3では52.2%、高1では67.8%を占めた。

 一方、金融経済教育を担う中学校の社会科、家庭科、高校の公民科、家庭科の教員を対象として21~22年度に実施した調査では、高校家庭科の教員の約6割が「教える側の専門知識が不足している」と回答するなど、多くの教員が指導の難しさを実感していることが判明した。高校では公民科、家庭科ともに教員の7割以上が、金融経済教育を実施するための授業時数について「全く足りない」「やや足りない」と感じていることも分かった。

 要望書は一連の調査結果を踏まえ、次期学習指導要領の議論に向け、①投資の意義や役割に関する学習内容を充実させる②資産形成についての学習内容も充実させる③お金や金融を巡る知識・技能を体系的に身に付ける新教科「ファイナンシャル・ウェルビーイング科(仮称)」を高校に新設する――の3点を求めた。また、社会科や家庭科を担当する教員に必要な知識を身に付けてもらうため、こうした教科の教員養成課程で経済学を必修とすることなども要請した。

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