愛知県小中学校長会長 都築 孝明
「おはようございます」…朝、校門付近に立っていると、早速子どもたちの元気な笑顔に出会えます。春の暖かい日には「このお花、咲いていたよ」、冬の寒い日には「こんなに氷が張っていたよ」などと、眼をきらきらさせながら見せてくれる子もいます。その笑顔を見ると、「この職業に就いてよかったなあ」と自然に思えます。
これまでの教職人生を顧みると、子どもたちの笑顔が楽しみで歩んできたのかなと感じます。英語教員として教壇に立っていた頃は、「外国の方々をたくさん招いて一人一人と交流してもらったら、子どもたちは生き生きと英語で話すかなあ」とか、「外国の友人に直接国際電話をつないで会話をしたら、子どもたちはきっと感動するだろうなあ」と考えて、実践を試みてきました。また、特別活動や部活動では、「どんな工夫をしたら盛り上がるか」「達成感を味わって喜ぶか」と考えて取り組んだこともありました。うまくいくことばかりではありませんでしたが、その時々の先輩、同輩、後輩に支えていただきながら、どのようにしたら子どもたちを笑顔にさせられるか、喜ばせることができるかという視点で、試行錯誤と創意工夫を重ねていたように思います。
昨今、教職の魅力向上や魅力発信の必要性が叫ばれています。「令和の日本型学校教育」を軸に、さまざまな教育改革が矢継ぎ早に繰り出され、同時に早急な成果も求められています。もちろん、PDCAサイクルに則った教育活動の取り組みは必要でしょう。また、働き方改革をはじめとするさまざまな改革を推進することが求められていることも否めません。しかしながら、それらによって生み出された新たな時間や方法によってさまざまに変化したことが、本当に子どもたちの笑顔につながっているのかということを確かめるとともに、それらを丁寧かつ謙虚に分析することが重要であるとも感じています。そして、それぞれの営みが子どもたちの笑顔につながったと実感できた時に、初めて本当の意味での改善となり、教職の魅力となってくるのではないでしょうか。
周辺視野という言葉があります。乗り物の速度が上がると、視野も狭くなっていくとのことです。加速度的に進む昨今の教育事情の中にあって、「学校」という乗り物の導き手として、たとえ速度が上がっても、教育的視野が狭まらないように心がけ、子どもたちの笑顔をきちんと見つめていきたいと思っています。
(幸田町立坂崎小学校長)