今年度の春休みは、入学式・始業式前の準備期間を5日間以上確保できた学校が多かった。昨年度は3日の学校がほとんど。プラス2日間の余裕があるだけで、先生たちの準備時間は大きく増えた。
4月早々、全国の学校を訪れたが、どの学校の先生も「今年は5日間あるから、ずいぶんよい。でも、やらなければいけないことは多く、疲れている」とおっしゃっていた。確かに1週間あるからこそやれてしまうことや、やるべきことは増え、疲労もたまることだろう。それでもしっかり準備できたことは意義深い。
暦に関係なく、4月の新年度準備には時間をしっかりと確保すべきだ。今年、準備期間が長かったことは、今年の初任者の離職率などに影響するのではないかと思っている。経過をしっかり追った上で、お伝えしたいと思う。
もう4月も中旬。春休みのことなんて遠い昔で、その日の仕事に追われている毎日かもしれない。
きっと朝早くに学校に行き、その日の教材研究を行い、授業が終われば校務分掌や会議資料に追われる毎日だろう。教員の4月の仕事量は本当に多い。4月だけでもスクール・サポート・スタッフの人数を倍増できるぐらいの予算を、国につけてほしい。それが厳しいのであれば、せめて文部科学省の皆さんには、4月の学校の視察に行っていただきたい。この業務量がある限り、働き方改革は進まない。
そんな4月は、当然ながら先生たちの家族にも環境変化がある。先生たちのお子さんだって、新しいクラス、新しい先生と共に、緊張した日々を過ごしているかもしれない。提出しなければならない書類、準備しなければいけない持ち物などもたくさんある。教員であろうとなかろうと、家に早く帰ってわが子と話したり、一緒に準備したりする時間は非常に大切だ。
しかし、教員の朝は早い。朝早くに学校に行って、夜遅くまで学校にいる。休憩時間に帰ることなんて、当然ながらできない。つまり、日が出ているうちのほとんどは学校にいることになる。私は教員時代、朝7時より前に家を出ていた。わが子と朝ごはんを食べたことは、ほぼない。
今は毎日、子どもを送り出してから仕事に取り組んでいる。在宅勤務ができることもあるが、出勤する日でも出社は9時30分。子どもたちを送り出してから、皿洗いや掃除をしてもまだ時間のお釣りがくる。
教員時代、平日の昼間に世の中がどのように動いているかをほぼ知らない生活を送っていたが、教員こそもっともっと世の中を知る必要がある。だからこそ、日中でも気軽に校外に出られる環境を整えるべきだ。変化の激しい時代だからこそ、身をもって社会の流れを感じる体験を多くすべきである。
だからこそ私は、仕事を進める上での時間の使い方を労働者の裁量に委ねる「裁量労働制」の選択肢が、教員にもあってもよいと思っている。
働き方の観点から見れば、空き時間にコンビニや銀行に行くことだってよいと思っている。6時間目が終わって何もない日は帰ればよいし、学年会だって、帰ってからオンラインで参加すればよい。わが子たちは親が早く帰ってきたことを喜ぶだろうし、夕方までに掃除ができれば、余裕を持って夕食の準備をすることだってできるようになるかもしれない。
そもそも、教員は教材研究を24時間365日している。より良い授業や学級経営を目指すなら、職員室で考えているだけでは限界がある。帰る最中の景色からヒントを得ることもある。寝る前に思い付くことだってある。休日の旅行先でひらめくこともある。教員にとって、自由度の高い働き方は必要不可欠である。
もちろんデメリットはある。今の業務量のまま裁量労働制に変えたら、長時間労働はなくならないだろうし、学校にいない教員の分まで学校にいる教員が対応しなければいけないことが出てきて、管理職の負担が増えたりするかもしれない。
だから同時に「授業時間が終わったら、先生たちは帰る」というのを、日本社会の当たり前にできればよい。管理職だって帰ればいい。「何かあったらどうするんだ!」という声が聞こえてきそうだが、「午後3時30分には、学校に先生はいない」というのが当たり前になれば、保護者は何かあっても学校に電話しなくなる。それくらい社会全体に大きな変化を起こさなければ、教員の成り手はこれからもどんどん減り続ける。先生たちが少しでも楽になる施策に、大胆に取り組んでいく必要がある。
私より少し先輩の先生たちは、休憩時間を後ろにずらして、午後4時に退勤するのが当たり前であった。自分が子どもの頃、先生たちは午後4時になると校庭に出てきて、テニスをしていたイメージがある。
そんな先生たちを見て、「楽しそうだな。先生という職もいいな」と思った記憶がある。楽しそうな大人に子どもたちは憧れる。子どもたちの一番身近な大人である先生たちが、笑顔でいられる環境整備をすべきだ。放課後トラブルがあれば、警察やお店に連絡するようになる。
学校は子どもが来てから帰るまで、安心・安全な学びの場を提供することにエネルギーを使える。先生たちのゆとりも生まれてくる。働き方改革はぐんと進む。
教員の働き方改革は待ったなしである。教科の再編、標準授業時数の削減、教員定数の改善…。できそうなことはたくさんある。産休・育休を取得したい先生が取得できるように、そして代替の先生の配置が確実にできるように、制度を整えていくことは喫緊の課題である。社会のゆがみを、学校現場が支え過ぎた。教員はもっと、子どもと授業のことだけを考えられる環境にすべきだ。デメリットばかり考えず、まずやってみる価値はあると思う。
私自身も「先生って楽しそうだよね。楽しくてやりがいのあるいい仕事だよね」と言われる日が来るまで、働き方改革の推進に励んでいく。