不登校児童生徒の自立支援に向け、宮崎県教育委員会はこのほど、宮崎市内に宮崎県教育支援センター「コネクト」を開設した。学校や関係団体と連携を図りながら、安心して活動できる居場所を提供するための施設。今後、オンライン授業に加え、授業を録画した動画視聴によるオンデマンド受講での高校の単位履修が可能かどうか研究していくとしており、義務教育ではないため自己責任とされがちだった高校生の不登校問題にも積極的に対応していく方針だ。
コネクトは宮崎市の宮崎県教育研修センター内に開設。元校長や教員経験者を中心とした5人の支援員のほか、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーを1人ずつ配置しており、児童生徒や保護者の相談に対応する。利用は平日の午前9時30分~午後3時30分。教室程度の広さがある活動スペースと、ソファやテントなどを備えた休憩スペース「コネクトルーム」がある。活動場所には数人で学習できる長机や少人数用の机、パーテーションで仕切られた個別学習に適したスペースがあり、個々の状況に対応できるよう配慮。歩いて数分の距離には、風光明媚(めいび)な白砂青松の地として名高い阿波岐原森林公園やサンビーチ一ツ葉があり、心が落ち着く松林、海岸を散策できる環境が整う。
宮崎県教育研修センターは「オンとオフ、活動と休息を切り替えられる環境。居場所、きっかけ、選択肢の一つをキーワードに、心を解きほぐして学校への復帰や社会的自立に向けた支援ができるようにしたい」と強調する。
不登校児童生徒の学習支援として、オンライン授業、オンデマンド授業も取り入れる。録画した授業の視聴によるオンデマンド授業やコネクトでの学習内容が高校の単位として代替可能かなども含め、今後、研究を進め、学校側との協議を進めていく意向だ。
同時対応が必要なオンライン授業に比べて教員の負担が小さいオンデマンド授業での単位履修が認められれば、不登校生徒の学習機会の拡大につながるが、国は、オンライン授業に関しても、卒業に必要な単位数の半分程度を上限に単位認定を認める方向に動き出したばかり。オンデマンド授業での単位認定は視聴だけでなく、課題提出などが必要となる。
単位履修を認めるための基準作りなど課題は多いが、県教育研修センターは「高校生の場合、単位履修は非常に気になる問題。最終的には学校長の判断であり、コネクトは立ち上がったばかりで検討はこれからだが、少しでもコネクトを利用する生徒が明るい方向に進めるように考えていきたい」と説明する。
コネクトでは、利用する児童生徒の状況に応じて、支援シートを基にした個別計画を立て、支援員との対話や学習活動、スポーツ、読書、花や野菜の栽培、周辺の散策など体験活動を通して直接支援する。また、宮崎県内の不登校対策の拠点として各市町村の教育センター、関係団体、フリースクールとの連携を進めていくという。