教員の処遇改善を巡り、財務省の財政制度等審議会(財政審)が公表した建議が、負担の軽重に応じたメリハリある給与体系とするのが基本的な考え方としたことについて、盛山正仁文科相は5月24日の閣議後会見で「職務や勤務の状況に応じた給与体系にすることはそれなりに必要」と述べた。一方で、文部科学省の施策全体の歳出・歳入の抜本的な見直しによって教員の処遇改善の財源を捻出すべきだとする建議の指摘については、「既定の給与予算の範囲にとらわれることなく、教職の重要性を踏まえた処遇改善をしていく必要がある」と反論した。
財政審が公表した建議「我が国の財政運営の進むべき方向」では、2025年度予算編成で行われる予定の教員の処遇見直しに関して、人材確保法による給与改善後の教員の優遇分の水準(約7%)を確保するために教職調整額を引き上げるべきとの意見に対し、同法が施行された1974年当時と現在では社会経済情勢が大きく異なっており、適当ではないと結論付けている。また、教員の処遇を見直すにあたっては、既定の給与予算を最大限に活用し、一律に給与水準を引き上げるのではなく、負担の軽重に応じたメリハリある給与体系とするのが基本的な考え方であるべきだと強調。教員の処遇改善を行うのであれば、文科省の施策全体の歳出・歳入の抜本的な見直しによって財源を捻出すべきだとしている。
建議で示されたこれらの考えについて、中教審の質の高い教師の確保特別部会が取りまとめた「審議のまとめ」で盛り込まれた処遇改善策とは異なる点を問われた盛山文科相は「審議会によってそれぞれの立場あるいはメンバーが異なるから、観点や発言の内容が違うのは自然なことかと思う」とした上で、教職調整額を少なくとも10%以上に引き上げるなどの「審議のまとめ」の処遇改善策を改めて説明。「人材確保法の趣旨も踏まえた教師の処遇の優遇分は、1980年当時には大幅に今と違っており、一般(行政職職)の方に比べて良かったと思うが、現在では0.35%にまで低下し、ほとんど変わらなくなっている」と指摘した。
一方で、建議が示したメリハリのある給与体系とすることや、文科省の歳出・歳入の抜本的な見直しで処遇改善分の財源を捻出すべきとの意見に対しては、「職務や勤務の状況に応じた給与体系にすることはそれなりに必要なことだが、既定の給与予算の範囲、要は、財政審は今の(文科省の)予算の中でやれということだ。既定の給与予算の範囲にとらわれることなく、教職の重要性を踏まえた処遇改善をしていく必要があると私たちは考えている」とけん制した。