教師力・人間力―若き教師への伝言(77) 目の前の子どもたちから学ぶ

教師力・人間力―若き教師への伝言(77) 目の前の子どもたちから学ぶ
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 教員2年目で初めての学級担任を任されました。当然、自分なりのアイデアを持ちながら一生懸命によい学級づくりを目指しました。しかし、自分が思っているようには、うまくいきませんでした。よく先輩の先生に話を聞いていただいたり、助言をいただいたりしていました。それでもうまくはいきませんでした。振り返ってみれば、自分の理想を押し付けようとするばかりで、目の前の子どもたちの考えや思いを知ろうとしていませんでした。教員生活を続けるほどに思います。あの時の子どもたちは一体どう思っていたのだろうかと。

 中学校で教員2年目の私は「中学3年生なんだから、これくらいできて当たり前」と、どの子に対しても思っていました。しかし、目の前の子どもたちは、好きなことも得意なことも、当然一人一人違います。だから、全員に同じ要求をするのではなく、一人一人に合った願いを持つべきだと今では思います。そして、その願いを達成できるように、具体的に伝えるべきです。理想とする姿があることは素晴らしいことですが、私たちの仕事は理想の姿を語ることではなく、理想の姿に近づけるために具体的な方法で子どもたちを導くことです。教員は、教育評論家ではなく、教育実践者であるべきです。

 前任の学校に勤め、研究の機会をいただいた際に、子どもたちの力を伸ばす授業のポイントについて、高学年の子どもたちと相談しました。子どもたちからは、1人1台端末を積極的に活用すること、話す活動と聴く活動を充実すること、教科係が授業のまとめをすることが挙げられました。子どもたちがこれまでの経験から得た、大事にしていることがよく分かりました。

 私たちは、研究授業を行うときに指導案を作成しますが、今の情報社会、検索をすればたくさんの指導案を参考にすることができます。おかげで勉強にはなりますが、もちろんそのままの授業をしても目の前の子どもたちには響きません。なぜなら、目の前の子どもたちの実態に合っていないからです。やはり授業を考え、計画を立てるということは、目の前の子どもたちのことを考えるということだと思います。

 目の前の子どもたちのことを考えることは、子どもたちのことを知ることから始まります。様子を観察することも必要ですが、子どもたちと話をしてみることが一番分かりやすいと思います。発信する側である教員が、伝えているつもりでも、受信する側の子どもたちには伝わっていないことがよくあります。「伝えたはずなのに」と言っていても子どもたちの成長にはつながりません。どうしたら子どもたちに伝わる伝え方ができるのかを考えなければなりません。子どもたちと話してみることで、何が伝わっていて何が伝わっていないのか、どんな方法であれば、より子どもたちに伝わるのかを知ることができます。そして、子どもたちの考えや思いを知ることができます。

 私は、いろいろな気付きが遅かったため、子どもたちに迷惑を掛け続けてきたと思いますが、何とか教員を続けてこられたのは、子どもたちの声に救われてきたからです。初めて担任をした子どもたちは、毎年同窓会を開いてくれます。大人になった彼らが語る当時の考えや思いは、とても温かいものです。教員という職の素晴らしさをかみ締めながら、楽しい時間を過ごすことができています。これからも、目の前の子どもたちから学び、子どもたちとともによい学校づくりを目指していきたいと思います。

 (長岡晃臣・江南市教育委員会教育課管理指導主事)

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