(こだま)英語教育の行方

(こだま)英語教育の行方
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 数学者でありエッセイストとして知られる藤原正彦氏の著書『日本人の真価』を読んだ。

 書中「『英語教育』が国を滅ぼす」の章にこうある。「英語という教科は、英語を使う可能性のある職業(外交官、商社マン、学者、CAなど)に就きたい希望をもった者だけが中学校で全力で勉強すればよい。授業だけでは到底足りず、週に20時間くらいの猛勉は必要だ。外国語学習は一気呵成(かせい)の集中が最も効果的なのだ」アメリカの大学で長く教壇に立っておられた氏の言だけに説得力があり傾聴に値する。

 小生は以前小欄(2020年1月30日付け)で小学校英語の教科化について疑問を呈した。「小学校5・6年の限られた週当たり授業時間を、各教科がしのぎを削って取り合っている中で、果たして英語の授業に貴重な週2時間を割く意味がどれほどあるのだろうか。英会話のできる日本人を否定するものではないが、どれほどの割合の日本人を英会話のできる日本人にしたいのか」と。藤原氏の一言一言に留飲が下がる思いであった。

 昨年、公立小学校では全国初となるイマージョン教育に取り組んでいるT市H小を訪れた。H小では20年度から国語と道徳以外の教科を主に英語で学ぶコースを6学級開設している。狙いは、英語のコミュニケーション能力を生かし、グローバル社会で活躍できる子どもを育成することにある。まさに英語漬けの授業が展開され、将来世界で活躍するであろう人材の姿が目の前にあった。来るべきグローバル社会の到来を予感させるものがあったのだが。

 インバウンドによって多くの外国人観光客が戻ってきた。ある京都の老舗料理店の店主が最新型の外国語翻訳機を取り出して流ちょうに外国人と会話している映像がテレビに映し出されていた。今やこういう時代なのである。

 氏はこうも言う。「グローバル社会で生き抜くため、若いうちに充分に鍛えるべきは、英語ではない。読書を通じ、知的充実に励むことなのである」と。

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