管理職研修「審査論文をどう書くか」(118)

管理職研修「審査論文をどう書くか」(118)
【協賛企画】
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論文テーマ

 質の高い教育を行うためには、社会の中で学校が信頼され、地域や保護者から教職員が信頼されることが大切です。しかし、昨今、教職員の不祥事が後を絶ちません。私たちは、教育公務員として「襟を正す」必要があります。あなたは、教頭として本県の現状をどう捉え、教職員の綱紀の保持にどのように努めますか。具体的に述べなさい。

【テーマの分析・解説】

 審査論文テーマには、不祥事について「本県の現状をどう捉え」とある。まずその現状把握を示すことが必要である。その上で、国や県の施策を踏まえた不祥事の防止策を論述する。また、不祥事が起こる背景や要因についても触れながら、それらを回避、解消する学校環境づくりや教職員の意識改革についてなど、実効性のある策を具体的に述べる。そして、何よりも教頭自身が不祥事を自分事として考え、その防止に向けて取り組んでいくことが重要である。不祥事を発生させないことが、学校運営上最大の課題であることを強く認識しながら、全体を通じて教頭としての決意が伝わる論文にしたい。

はじめに

 「先生は自慢の先生です」。こんな声を児童生徒や保護者から聞くことができる学校は、児童生徒が充実した学校生活を送る姿が日常となっているであろう。一方、こうした声を全て台無しにしてしまうのが教職員の不祥事である。残念ながら、本県においてもその根絶に向けて全力で取り組んでいるにもかかわらず、交通違反や体罰、わいせつ事案や不適切な指導などが発生し、学校への信頼を根底から揺るがす事態に至っている。こうした不祥事を根絶し信頼される学校を確立するために、私は教頭として校長の意をくみ、以下に述べる3つの取り組みを推進する。

風通しのよい職場風土の醸成

 校内に限らず校外における不祥事防止においても、風通しのよい職場環境づくりが何より大切だと考える。現在勤務している学校は、職員同士が頻繁に情報交換を行ったり、不適切な事案があればすぐに相談し合ったりできる同僚性の高い職場である。この経験を生かし、私は教頭として、「建設的に相手に意見することに躊躇(ちゅうちょ)する必要はないよ」「明らかな間違いは遠慮なく指摘し合いましょう」など、まず職員の心理的安全性を高める声掛けを行っていく。また、小さなことでも感謝を伝え合うように積極的に職員に働き掛ける。このように職員の心理的安全性を高め、互いの存在を承認・尊重し合う取り組みを継続していけば、職員同士が見て見ぬふりをしてしまうことがなくなり、また互いの変化も把握しやすくなる。

事例研修による職員のコンプライアンス意識の徹底

 不祥事が起こる要因の一つが、職員のコンプライアンス意識の欠如である。コンプライアンス意識を高めるための効果的な事例研修は、不祥事防止に向けて不可欠であると考える。そこで、私は教頭としてリーダーシップを発揮しながら、自分事で捉えることができる研修を実施していく。まず、誰でも不祥事を起こす可能性があるという意識を職員全員で共有する。次に、コンプライアンス面談での職員への聞き取りを生かして、身近に感じている不祥事の事例を優先的に取り上げる。取り上げた事例について、小グループを構成して、自校の学校環境や自身の経験を踏まえながら、リスク要因や回避方法について話し合う。教頭は、ファシリテーターとして、各グループを回りグループから出された疑問や質問などに対応していく。最後に、各グループから出されたリスク要因や回避方法を全体で共有しながら、不祥事防止に向けた実践項目をまとめて示す。こうした事例研修を通じて、職員一人一人が不祥事防止を自分事として考え、高いコンプライアンス意識を徹底していけるようにする。

コンプライアンス面談と連動した働き掛けで使命感の向上

 自身や同僚の不適切な行いを止める最終的な力は、教育に対する強い使命感と職務に対する高い誇りであると考える。そこで私は、校長が行うコンプライアンス面談と時期を合わせながら、改めて職員に教育公務員としての使命感と誇りを感じさせる働き掛けを行う。具体的には、初任者として着任したときの気持ちや思い、これまで経験してきた教職員としてのやりがいなどを振り返るシートを面談時期に合わせて配付し、記入してもらう。シートの内容を踏まえて、強い使命感と高い誇りを持ち続けられるように、業務の中で一人一人に応じた声掛けをする。こうした定期的な取り組みに加え、職員のモチベーションが下がっているときなどは、そのタイミングを逃すことなく声掛けをして、使命感の維持・向上を図っていく。

おわりに

 児童生徒、保護者、地域と教職員が厚い信頼関係にある学校には、笑顔があふれている。また、誰もが誇りが持てる学校だと胸を張っている。私は教頭として、自分自身も厳しく律しながら、不祥事のない笑顔にあふれた誇り高い学校を築いていく所存である。

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