「自分と友達の好きなものが違っても一緒でも、みんな優しい」
これは、昨年度末に行った「友達と違う考えをもつことはよいことか」というアンケートの本校児童の回答の一部である。
本校は、岡崎市教育委員会からの委嘱を受け、2022年度より、「共生の力を高めようとする子供」の育成を目指して研究を進めている。
共生の心を育むにあたり、本校では「共生」を「人種、障害、性別、年齢などの外面的な違いだけでなく、生き方、考え方、能力などの内面的な違いも受容し、互いに認め合い、支え合おうとすること」と定義した。共生(symbiosis)は、生物学的な意味が大きいが、本校の解釈では、共感(empathy)の意に近いものと考える。
「共生の力を高めようとする子供」の具体的な姿を、次の3つに分けた。
(1)【自己】過去の自分を認め、未来の自分をつくろうとする子供
(2)【他者】仲間の全てを受け入れ、関わろうとする子供
(3)【共学】共に学ぶことのよさを実感し、互いに高めようとする子供
また、これらの姿を具現するために、それぞれの姿に応じて、手だてを講じることとした。
本校では、岡崎市が推進している「チーム学習」を授業に取り入れている。チーム学習とは、4人1組を基本として、困ったときには助け合って学びを深められる学習形態である。さらに、本校ではその中で、個で課題に向き合う「マイタイム」の確保を重視している。課題の提示後や、仲間と関わった後に、個で課題を追究する場を設けることで、自分と向き合う姿を引き出している。
また、授業の終末には、学習の達成度とともに、共生の視点でも振り返りを行う。カードを活用して本時の自分の姿を振り返ることで、自己の変容を意識できるようになっている。
本校は、長年、担任による読み聞かせを中心に、読書指導の研究を進めてきた。その実績を足掛かりに、教師が「共生の本リスト」を新たに作成し、多様な価値に触れられる本を子供たちに紹介している。読み聞かせを通して感じたことを伝え合う中で、自分とは異なる考えも受け入れようとする姿が見られるようになっている。
共に学ぶ意識を高めるために、共生の力をさらに6つ(共感・共創・共助・共練・共存・共解)に細分化した「根石Goals」を設定した。教師は、6つのGoalの中から本時で特に高めたいものを1つ選び、学習課題と共に提示している。教師が学習内容に適したGoalを意図的に示すことで、子供は、常に仲間と共に学び、互いに高めようとしている。
10月30日(水)にこれまでの研究の成果を、市内外の先生方に発表する。子供たちが互いの違いを受容し、認め合い、支え合いながら学ぶ姿を、ぜひ見ていただきたい。
(文責・稲垣祐嗣校長、執筆・鈴木大介教諭)