高等教育の「適正規模」「地域アクセス」確保を 中教審部会

高等教育の「適正規模」「地域アクセス」確保を 中教審部会
オンラインで公開された中教審の高等教育の在り方に関する特別部会=YouTube文科省会議専用チャンネルより
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 中教審の「高等教育の在り方に関する特別部会」が5月31日、文部科学省で開かれ、少子化が急速に進む中、2040年以降の社会を見据えた高等教育の目指すべき姿や政策の方向性などを示す中間まとめの素案が示された。素案では、少子化が進む中で高等教育機関の連携や再編・統合について深化した取り組みが求められると問題提起し、今後の政策の方向性として、高等教育機関の適正な規模の確保に向けた支援や地域でのアクセス確保などが必要だと強調されている。これに対して委員からは「改革への財政支援についてもしっかり示すべきだ」などの意見や要望が出された。

 同部会は、昨年9月に文科相から諮問を受けて設置され、2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿や、高等教育の改革を支える支援方策の在り方などについて検討している。この日はこれまでの5回の議論を踏まえて中間まとめの素案が示された。

 素案では、高等教育を取り巻く状況について、急速な少子化の進行とともに論文数の順位低下など日本の研究力の低下や博士の学位授与者数の減少、進学率の地域間格差などといった課題を指摘。設置者の枠を超えて、高等教育機関の連携や再編・統合の在り方についてより深化した取り組みが求められると問題提起している。

 その上で今後の高等教育の目指すべき姿を実現するために重視すべき観点として、デジタル・半導体などの成長分野を支える人材の育成や国際競争の中での研究力の強化、学生への経済的支援の充実、地域との連携などを挙げた。

 さらに、こうした観点も踏まえて今後の高等教育の政策の方向性として、留学生や社会人の受け入れも含めた多様な価値観が集まるキャンパスの実現や、18歳で入学する学生以外の受け入れ拡大、再編・統合や縮小・撤退への支援を通した高等教育機関の適正な規模の確保、地域で自治体・産業界が人材育成の在り方を議論する場の構築などが求められると打ち出している。

 この素案に対し、出席した各委員から意見や要望が出された。益戸正樹委員(UiPath特別顧問)は「改革をやればやるほど、痛みを伴うくらいコストがかかるが、今までと同じトーンで高等教育の改革を支える支援方策が書かれている。これだけの改革を進めるのだから、政府がしっかり財政支援をすべきと突っ込んだ書き方をすべきだ」と指摘した。

 小林浩委員(リクルート進学総研所長・カレッジマネジメント編集長)は「社会が大きく変化する中で人材も変化しなければならず、成長分野に向けたリスキリング・リカレントが重要なポイントになる。そのためには知識スキルを可視化することが必要であり、それを評価するための国家資格の仕組みづくりも検討すべきと思う」と提言した。

 伊藤公平委員(慶應義塾長)は「2040年には18歳人口が25%減っていくが、大学でやれることはたくさんあると思っている。一人一人の少数精鋭化に向けて大学や短大などが何を共通目標として学生たちに勉強させる土台をつくり、どれだけのコストがかかるべきかを議論すべきだ。国としてやらなければいけない高等教育、かけるべきコストを明らかにして、結果的に最適な規模に落ち着いていく方向性を打ち出さなければいけないと思う」と強調した。

 同部会では、同日の各委員の意見を踏まえて次回の会議で改めて中間まとめ案を示し、さらに議論を深めることにしている。

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