2019年に福岡県春日市の市立小学校の新任の男性教諭(当時24歳)が自殺したのは、長時間労働や指導教諭らによる継続的なパワハラが原因だとして、春日市と福岡県に総額約9000万円の損害賠償を求める訴えを6月11日に、男性教諭の両親が福岡地裁に起こした。原告の代理人が同18日に記者会見し、明らかにした。
訴状などによると、19年9月12日、春日市の市立小学校で勤務していた男性教諭が放課後に教室で自殺を図り、翌日、死亡した。男性教諭は同年4月に大学を卒業して同校に配属されたばかりだった。男性はゴールデンウイーク明けから2カ月連続で月120時間超の時間外労働を余儀なくされるなど長時間労働が常態化していたのに加え、運動会の踊りの振り付けを覚えていないとして指導教諭から厳しい指導を受けたり、自殺を図った日も叱責(しっせき)を受けて涙を流して謝罪させられたりしていたという。
原告は、こうした長時間労働や指導教諭らからのパワハラなどの業務上の心理的負荷で精神疾患を発病し追い詰められた結果、自殺に至ったと認められると主張している。
21年11月に男性教諭の自殺が公務災害と認められたことを受けて、遺族は市などに対して謝罪や解決金の支払いを求めたが明確な方針が示されず、提訴に至ったとしている。
原告は春日市などの責任について、男性教諭の心身の健康を損なうことがないよう注意すべき義務を負っていたにもかかわらず、長時間労働に従事させた上、パワハラ行為を漫然と放置した結果、精神疾患や自殺に追い込んだとして、安全配慮義務に違反したことが明らかだと主張している。
一方、提訴について、春日市教育委員会は「御遺族の方々に真摯(しんし)に向き合い、できうる限りの対応を尽くしてきたが、意を尽くせず、今に至っているものと受け止めている。訴状の内容を確認して、教員の任命権者である福岡県教委と協議しながら、誠実に対応していきたいと考えている」とコメントしている。