日本版DBS、教員などの性犯罪歴確認 こども性暴力防止法が成立

日本版DBS、教員などの性犯罪歴確認 こども性暴力防止法が成立
記者会見を開いた認定NPO法人「フローレンス」の赤坂代表理事(左から2人目)ら。同団体は日本版DBS創設を提言してきた=撮影:水野拓昌
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 教員や保育士など子どもと接する仕事に就く人に性犯罪歴がないかを確認する「日本版DBS」の創設を盛り込んだ「こども性暴力防止法」が6月19日、参院本会議で全会一致によって可決・成立した。同法は学校や幼稚園、保育所、児童養護施設などの設置者と認定を受けた学童保育、学習塾、スポーツクラブなどを運営する民間事業者に性暴力を防止する措置を義務付けている。

参議院本会議でこども性暴力防止法が可決し、一礼する加藤鮎子こども政策担当相=参議院インターネット審議中継より
参議院本会議でこども性暴力防止法が可決し、一礼する加藤鮎子こども政策担当相=参議院インターネット審議中継より

 日本版DBSは英国のDBS制度を参考にした制度で、学校や事業者が就業予定者について、こども家庭庁を通じて法務省に性犯罪歴を照会する仕組み。性犯罪歴がない場合は、犯罪事実確認書が事業者に交付され、性犯罪歴がある場合は本人に通知されて、本人が内定を辞退すれば、事業者に犯罪歴が通知されない。

 現職者も3年以内に順次、確認の対象となり、性犯罪歴が確認された場合、子どもに接する職種から配置転換するといった対応が求められる。

 確認の対象となる性犯罪は、不同意性交等罪、不同意わいせつ罪などの刑法犯や児童ポルノ禁止法違反、痴漢や盗撮などの条例違反など。犯罪歴の確認の対象となる期間は最長20年。拘禁刑(懲役刑と禁固刑を統合)で実刑の場合は刑の執行終了から20年、執行猶予の場合は判決確定日から10年、罰金刑は刑の執行終了から10年となっている。

 こども性暴力防止法は、日本版DBSに加えて、子どもへの性暴力を防止する措置として、性暴力が疑われる場合の調査、被害者の保護、支援も学校などの設置者や事業者の責務とし、教員、従業員らの研修、子どもへの面談や相談しやすい態勢づくりなどの取り組みを求めている。

 施行は2年半以内に政令で定められる。政府はこの間に、制度を活用する事業者向けのガイドラインの策定など、運用に向けた環境整備を進める。

 この日は同法成立後、2017年から日本版DBS制度創設を提言してきた認定NPO法人「フローレンス」が厚労省で記者会見を開き、赤坂緑代表理事は「子どもを守り、同時に子どもに関わる仕事に就く善意の大人を守る制度。法案が成立したことは大きな一歩」と歓迎した。ただ、「子どもの性被害事件では起訴、有罪とならない場合も多い」として、起訴猶予など照会の対象を広げることや照会期間を延長することを今後の検討課題に挙げた。同時に認定制度の課題も指摘した。

 また、同席した日本大学文理学部教育学科の末冨芳教授は「いろいろな障壁があり、ここに至る道はたいへん厳しかった。やっと、子どもたちを性暴力から守るスタートラインにつけた」と強調し、日本版DBSの運用開始に向けて学校などの責任体制整備と国の支援体制、教員や保育士の養成課程のカリキュラム改善、加害防止プログラムの拡充などを課題に挙げた。

 学習塾「花まる学習会」の高濱正伸代表は「塾を経営する立場から、講師が性加害を起こすか起こさないか全く分からないので大きな課題だった。法成立は一歩目としては大きい」と述べ、東京大学多様性包摂共創センターの中野円佳准教授は、ジャーナリストとしてベビーシッターによる性犯罪を取材した経験から、時間がたってから明るみになる事例や犯罪が立件されない事例も多い点や、これまではベビーシッターや教員、保育士と職種ごとに対策が縦割りだった点を問題として指摘した。

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