多様な生徒を受け入れる高校の実践に注目 WGがヒアリング

多様な生徒を受け入れる高校の実践に注目 WGがヒアリング
多様な生徒の受け入れに力を入れる高校から事例を聞いたWG=オンラインで取材
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 中教審初等中等教育分科会の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」は6月20日、第13回会合を開き、中学校で不登校経験のある生徒など、多様な生徒を受け入れ、サポートしている特徴を持つ高校へのヒアリングを行った。合理的配慮として一人で過ごせる空間を設けたり、一部の科目の単位を他の高校の通信制課程で修得できるようにすることで、卒業しやすくしたりする取り組みや、高校と特別支援学校高等部が同じ敷地の中にあり、一緒に同じ授業を学べる事例などが報告された。

 この日の会合では、全日制・定時制・通信制課程の在り方、遠隔授業配信センターの体制等の在り方、高校の指導体制の充実のための方策をテーマに、大阪府にあるYMCA学院高校と兵庫県立阪神昆陽高校・同県立阪神昆陽特別支援学校が実践発表を行い、また岡山県教育委員会から、同県立岡山御津高校の「フレックス制」の導入について説明があった。

 広域通信制・総合学科のYMCA学院高校では、在籍する生徒の9割以上に不登校経験があり、発達障害や起立性調節障害などの多様なニーズのある生徒が年々増加していることから、廊下での受講を認めたり、一人で静かに過ごせるサイレントフロアを設置したりするなど、さまざまな合理的配慮を行っている。

 ワーキンググループの委員も務める鍛治田千文校長は「(生徒は)非常に不安と緊張を持ちながら入ってくる。その生徒たちが安心してこの学校に居場所を見つけ、自分らしさが出てくる。そうなると、学習や人間関係にも積極的に取り組める。従って、そこまでの過程に注力している」と強調した。

 三部制の単位制高校である阪神昆陽高校と、高等部のみの特別支援学校で、知的障害のある生徒が在籍している阪神昆陽特別支援学校は、一部の施設を共有し、高校の生徒と特別支援学校の生徒が一部の科目で同じ授業を一緒に受けている。高校では学校設定科目「ノーマライゼーション」を新入生全員が受講し、共生社会について理解を深めているほか、義務教育の学習内容の学び直しにも力を入れる。

 両校の校長を兼任する桑田耕治校長は「特別支援学校の生徒は卒業するとすぐに社会に出て(さまざまな人と一緒に)働くことになる。高校生と一緒に学び、いろいろな人たちと交流する環境が学校の中にあると、実際に社会に出ていく上で必要な成長につながっていくのではないか」と、共に学ぶ意義を語った。

 この日の会合では、岡山御津高校で予定されている「フレックス制」についても説明された。22年度から不登校経験者の受け入れを打ち出したところ、志願者が増加したことを受けて、同高は25年度から、岡山県立岡山操山高校の通信制課程の一部の科目を履修し、単位を修得できるようにする。学年が上がるにつれて通信制課程を履修する割合を少なくしていったり、通信制課程で履修した科目の質問や学習支援は岡山御津高校に登校して受けるようにしたりすることで、卒業までサポートする。また、校内には県内の不登校の中学生を対象とした教育支援センターを開設するなど、不登校の生徒に寄り添った支援を展開するという。

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