日本の高校生はSNSを利用する中で個人情報の漏えいやアカウントの乗っ取り、悪口や嫌がらせといった被害に遭うのが少ないことが、国立青少年教育振興機構が7月2日に発表した、日本、米国、中国、韓国の高校生に行った調査の結果で分かった。一方で、SNSの利用によって学習意欲が高まった割合は4カ国の中で日本が最も低くなるなど、日本の高校生のSNSへの意識や活用、学校での教育の特徴が浮き彫りとなった。
同調査は昨年9月から今年1月にかけて、日本の高校生4356人、米国の高校生1512人、中国の高校生7750人、韓国の高校生1508人に行った。LINE、インスタグラム、フェイスブック、XなどのSNSを利用していると回答した割合は▽日本 98.8%▽米国 96.6%▽中国 90.1%▽韓国 99.9%――で、どの国でもほとんどの高校生が利用していた。
日本の高校生はSNSを利用していて「個人情報を漏えいされたこと」「架空請求をされたこと」「アカウントの乗っ取りをされたこと」がある割合はいずれも9%を下回り、4カ国の中で最も低かった。SNS上で悪口や嫌がらせを受けることが「よくある」「時々ある」と答えた割合は、日本が4.3%なのに対し、米国は30.4%、中国は11.8%、韓国は10.1%だった。
また、日本の高校生は「SNS上では、自分の言いたいことを何でも言ってよいと思う」に対し、「そうだ」「まあそうだ」と答えた割合が4.9%で、米国の18.2%、中国の26.5%、韓国の30.0%よりもかなり低かった。
SNSの利用について学校で習ったことでは、日本の高校生の約9割が「プライバシーと個人情報に関する知識」「安全意識をもつこと(危険を予想し、被害を予防する)」「正しい情報を収集・判断する方法」「適切にコミュニケーションをとるためのマナーやルール、言葉づかいなど」を学んだことがあると答えていた。
SNSの利用によって、学習意欲が「非常に高くなった」「少し高くなった」と答えている割合をみると、日本は25.8%であるのに対し、米国は41.2%、中国は49.2%、韓国は47.3%で、「少し低くなった」「非常に低くなった」と答えた割合も、日本が最も高かった(=グラフ)。
調査結果を分析した遠藤伸太郎千葉工業大学先進工学部教育センター准教授は「SNSはいろいろなアプローチで学習をサポートできるツールだが、一番大事なのは本人が知りたい、学びたいと思うことにある。学ぶ意欲を高めるには、いきなり学習ツールとしてSNSを使うのではなく、まずはリアルな体験活動などで動機付けを行い、その意欲をさらに高めていくためにSNSを利用していくとよいのではないか」と話す。