22教委で教員不足が悪化 定年引き上げへの対応が鍵に

22教委で教員不足が悪化 定年引き上げへの対応が鍵に
iStock.com/maroke
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 今年度が始まった時点での教員不足の状況を前年の同じ時期と比べると、22都道府県・政令市教委が悪化したと答えていたことが7月9日、文部科学省が出した通知で明らかとなった。文科省では、昨年度末に行われた地方公務員の定年引き上げを受けた各教委の対応の違いによって、教員不足の状況が左右された可能性があるとみており、対象となる教員の意向を正確に把握した上で、新規採用計画に反映させるなどの対応を求めている。

 教員不足を巡っては、文科省が初めて実施した調査で、2021年5月1日時点で2065人の教員不足が発生していることが明らかとなった。その後、同省は教員不足の状況について、大阪府豊能地区を含む各都道府県・政令市教委にアンケートを継続して実施している。

 今回のアンケートでは、24年度当初の教員不足について、23年度当初と比べたときの状況を尋ねた。その結果、11教委が「改善した」、35教委が「同程度」、22教委が「悪化した」と答えていた。前回の23年度当初の教員不足について、22年度当初と比べたときの結果は、11教委が「改善した」、28教委が「同程度」、29教委が「悪化した」だったので、依然として厳しい状況が続いている(=グラフ)。

教員不足の状況についての都道府県・政令市へのアンケート結果
教員不足の状況についての都道府県・政令市へのアンケート結果

 校種別でみると、小学校と中学校は「改善した」と答えた教委が増えているが、高校や特別支援学校では逆に「悪化した」が増えていた。

 この結果を踏まえ、通知では引き続き現職以外の教員免許保持者(ペーパーティーチャー)向けの研修会を実施するなどして人材の掘り起こしをしていくことや、正規教員の採用について目標を設定し、計画的な任用をしていくこと、特別免許状などを活用した多様な教員人材の確保に努めることを求めた。

 また、通知では新たに、昨年度末に行われた地方公務員の定年引き上げを踏まえた対応についても言及している。アンケートからは、定年引き上げを受けて、臨時講師を配置していた枠を正規教員に置き換えるといった対応を取っていた自治体では、臨時講師の需要を抑制できたことで教員不足の状況改善に寄与できたという回答があった一方、想定以上に退職者が出てしまったことで臨時講師の需要が増加した結果、教員不足の悪化の一因になったという回答もあったという。

 これを受け通知では、地方公務員の定年引き上げは今後も段階的に実施されることから、年度当初の指導体制の確保につなげられるよう、対象者が勤務を継続するか、退職するかといった意向を正確に把握し、退職者の推計が新規採用計画に適切に反映されるようにするなどの工夫改善を検討するよう呼び掛けている。

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