教師にも「夏休みの宿題」 自身にミッションを課す(喜名朝博)

教師にも「夏休みの宿題」 自身にミッションを課す(喜名朝博)
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「先生の通知表」が自身を振り返る材料に

 担任時代、子どもたちに通知表を渡す時間を使って「先生の通知表」を作ってもらっていた。白紙を渡すだけだったが、学校のものとそっくりに作り、各教科の欄には「教え方」の項目、所見欄には励ましの言葉もあった。「先生の通知表」は、その学期の教師としての自分の在り方を振り返り、前向きにしてくれる材料だった。

 さて、4月から息つく暇もなく走り続けてきたが、夏休みにはいったん立ち止まって、自身を振り返る時間を取りたい。学級経営や生徒指導、授業改善への取り組みはどうだっただろうか。何より、子どもたちをしっかり見てきただろうか。

 振り返ったら次は前を向き、これから何をすべきか考えたい。時間はあっという間に過ぎていく。だから、計画的に過ごしましょうというのが子どもたちへの指導である。計画もいいが、自身にミッションを課すという方法もある。例えばこんなミッションが考えられる。

自分に夏休みの宿題を出す

 夏休みの宿題を廃止した学校もあるが、あえて自分に夏休みの宿題を出そう。「夏休みの宿題」とすればゴールが見えてくる。授業力を磨くため、喫緊の教育課題について理解を深めるため、夏休み明けの授業を充実させるため、その目的を明確にして取り組み課題を設定していく。読書10冊、3つのテーマについて探究、毎日1時間の体力作りなど、具体的な数値を掲げると行動目標になる。さらに、身近な人にそれを宣言すればモチベーションも高まっていく。

研修会や研究会に参加する

 この夏も各地でさまざまな研修会や研究会が開催される。タイトルを見ただけでもわくわくするものもある。その中から自ら求める学びと関連する研修会や研究会への参加を申し込む。オンラインも増えてきたが、その場の空気を感じることが重要だ。参加費を振り込んだり、仲間と一緒に申し込んだりすれば、参加しないわけにはいかなくなる。

 そして、実際に参加してみると、熱心に学ぼうとする教師の多さに驚かされる。そのような場に身を置くことで、向学心が刺激されるのも夏休みならではである。さらに、学んだことはアウトプットによって確かな学びとなる。誰かに伝えるためのプレゼンを作っておけば、後で必ず役に立つ。

同僚と語り合う時間を確保する

 学期中に行われる学年会などでは、もう少し掘り下げたい、もっと多くの意見や考えを聞きたいと思っても、時間の制約があり不完全燃焼で終わってしまうことが多い。時間に余裕がある夏休みは、教師相互の対話の時間を確保したい。

 年度当初からこれまでの子どもたちの様子を共有し、夏休み明けの指導に役立てる。担任の児童生徒理解はあくまでその担任の見方でしかない。他者の見方を知ることで多面的な児童生徒理解が実現する。また、学年で取り組む学校行事の細案を検討したり、教科等の指導計画を確認したり、見直したりしておけば、余裕をもって夏休み明けからの指導を始めることができる。

自分の専門性や強みを磨く

 「チーム学校」とは、教職員一人一人がその専門性を生かして能力を発揮し、その総体としての学校力を最大限にしていくことである。では、自分の専門性、強みは何か、自分自身は理解しているだろうか。もし、自分の強みが漠然としていたら、自分が取り組んできたことを具体的なエピソードとして言語化することから始めたい。それを他者に説明することで強みが鮮明になっていく。

 その意味でも、同僚と語り合うことが大切なのだ。また、自身の強みを磨くためにも、研修会や研究会などに参加し、学びの場を広げていくことが重要である。自身の強みを磨くというミッションは、全てのミッションを貫くものとなるのだ。

子どもたちへの思いを行動にする

 長期休業がリスクになる子どもたちがいる。給食がないことを不安に思う子どもたちや、虐待が心配される子どもたちである。友達関係や家族関係に悩む子どもたちや、不登校や不登校傾向の子どもたちもいる。誰もが何かしらの心配事や不安を抱えている。

 そんな子どもたちへの思いを行動に変えていくことをミッションにしたい。1人1台端末を活用して連絡を取ったり、登校の機会に話を聴いたりして、子どもたちの状況を把握していく。直接電話をして声を聞くという行動が必要な子どももいるはずだ。杞憂(きゆう)に終わったとしても問題ない。それが教師の本来のミッションなのだ。

 夏休み明け、子どもたちも教師も皆、元気な姿で再会し、よいスタートを切れるようにすることが夏休みの最重要ミッションである。

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