三河小中学校長会長 彦坂 登一朗
本校の教育目標は「生きる勇気を育む学校」です。憧れや夢に向かい歩み続けようとするエネルギー、情意の涵養を最も大切にしています。
働き方を改善しつつ教育目標に迫るため、それまで多くの時間と労力を費やしていた現職研修の在り方を抜本的に見直しました。「教科のおもしろさ(本質)の追求」をテーマとして、日々の地道な授業改善に力を注げるようにしたのです。
具体的には、それまで異なる組織、計画で進めていた学級経営、現職研修、教職員評価を一体的に推進できるようシステムを統合し、担任らが本来すべきこと、したいことに力を注げるようにしました。
また、研修教科の選択とテーマに迫る理論構築は各教員と学年部会に任せています。これにより、学校研究として後退した部分はありますが、個々の教員の授業にかける情熱は着実に高まっています。
さらに、日々の授業を重視する立場から、授業研修では教科書使用を基本とし、教科書の教材性を見抜き授業を構成する力の育成を目指します。
以下は、6年生社会科「三人の武将と天下統一」のまとめで、三人の武将の中で最も魅力を感じた織田信長についてA児が書いた記録(抜粋)です。
「何もない場所からスタートした信長を私は見て、希望をもらえました。どん底にいる状況でも、だれでもがんばれば、すごいところにいけるんだと、暗くて不安だった未来に光をくれました。そして、信長の姿を見て、秀吉と家康も希望をもらえたんじゃないかと思いました」
A児はとても難しい家庭背景を抱えた子どもでした。「暗くて不安だった未来に光をくれました」から、自分の将来に大きな不安を抱く彼女の心に、信長の生きざまが希望の光を与えていることが分かります。この単元は教科書中心で進められた授業ですが、授業構成の工夫によりA児の心は揺さぶられ、その学びは一教科の学習内容にとどまらず、「生きる勇気」をも高めているのです。授業の力を感じる力強い記録で、われわれもまた光をもらった思いです。
今、本校の改革を振り返ってみて、改めてわれわれ管理職が大切にすべきことに気付かされます。それは、教師の情熱を信じる、そして、授業の力を信じる、ということになるのでしょう。
(田原市立田原中部小学校長)