豊明市の少年院「豊ケ岡学園」が、建物の老朽化と収容率の低下のため2025年3月末で廃止されるとの報道があった。
瞬間A男の顔がよぎった。40年ほど前、「市内一のワル」と呼ばれたA男は突然小生のクラスに転入してきた。卒業式を半年後に控えた2学期であった。長ラン、ボンタンスタイルで登校するや校門前で喫煙。シンナー吸引は日常茶飯事、夜中にバイクを乗り回す日々だった。他校生徒との暴行事件も相まって当然の成り行きとして鑑別所に入ることとなった。幾度も面会を重ねたがA男が心を開くことはなかった。卒業式には何とか参加させることができたが、卒業間もなく少年院に収容されたとの報せが入った。
全国的にも少年院の閉鎖が相次ぎ、18年に全国で51か所だったのが23年度には44か所に減った。少年院減少の背景には少年犯罪の減少がある。犯罪白書によると刑法犯で検挙された少年は03年に約16万6000人だったが、21年はその8分の1の約2万人に激減した。少年非行第3のピーク(1980年代)を知る者としては単純に喜ばしく思う反面、言い知れぬ不安を抱く。
かつての子供は身近に非行を見聞きしたり経験したりして育ち、成長するとともにそこから脱却していく道筋をたどってきた。しかし、近年ほとんどの子供が身の回りで非行を見聞きせず、自身も経験しないで成人する時代となった。こうした状況が子供たちの社会的成長や、成人になってからの犯罪の質的変化にどのような影響を与えるのかを思う。
A男と再び会う機会があった。立派に成長し社会的にも認められ、PTA会長も経験したという。毎年送られてくる年賀状の文字は美しく整えられている。いつどこで彼が立ち直ったのかを知る由もないが、少なからず少年院での生活が底流にあると思う。
少年院は「矯正教育」を施すことを旨としている。学校ではなし得ない教育を行っている。じくじたる思いとともに心から感謝の意を表したい。