本校は、全校生徒約700人の市内で最も大きな規模の学校である。素直な生徒が多く、学習にも前向きに取り組むことができるが、一つの解に満足し、よりよい方法へ挑戦する姿勢に欠けている。
先を見通せないこれからの時代を生きていく生徒たちに、今までの常識や固定観念にとらわれず、自らの手で未来を切り開き社会を創造する担い手となってほしいという願いを込めて、研究主題を設定した。
本研究では生徒が将来にわたって生き生きと人生を歩んでいくための4つの資質・能力「対象を自分事として考えていく力」「自らの手で考えを構築する力」「考えを表現したり受容したりする力」「考えを更新する力」を育む。
「主体的・対話的で深い学び」が実現可能である問題解決的な学習課程「未来SOUZOU」を取り入れた教育活動を行えば、生徒の4つの資質・能力が高まり、目指す姿である「学習課題を自分事として捉え、解決に向けて動き出す姿」「問題の解決に向けて必要な手段を考えて追究し、自分の考えを構築する姿」「他者と交流をする中で、自らの考えを見つめ直したり深めたりする姿」に迫ることができるであろうと仮説を定めた。
本研究では、「つなぐ・つくる・つきつめる」の段階を重視した単元を構想する。その中で「Firstインパクト(つなぐ段階において、題材との出会わせ方を工夫するなど、身近にある問題と学習内容をマッチングさせて自分事として捉えられる場を設定する)」「Secondインパクト(つくる段階において、思考ツールを活用するなど、自分の考えを構築する支援を行う)」「Zoomインパクト(つきつめる段階において、他者との対話を繰り返す場を設定することで、新しい気付きや考えの更新につなげる)」「Tタイム(意見交流の質を高める交流活動の工夫)」の手だてをとった。
中2社会科の中国・四国地方の授業では、都市部の人口だけ増えていると考える生徒に、船で2時間かかる交通不便な島の人口が増えている事実に出会わせる問題提示を行った。生徒は、「本当にそうなのか」「他にも同じような市町村はあるのか探ってみたい」と自分事として捉え、その後の追究活動に熱中して取り組む姿が多く見られた。
意見交流では、自分の考えを伝えるだけでなく、他者(反対)の立場から問題を見つめることで、自分の考えを更新する姿が見られた。
単純に事象やテーマに出会うだけ(事象やゲームの提示)ではなく、対象である「人・もの・こと」と生徒の思いや興味関心をいかにつなぐか、生徒一人一人が参加する意見交流の質をいかに高めるかに焦点を当てて、継続的な研究を行う。目指す生徒像の実現に向け全教職員で実践を重ね、手だての有効性を検証していきたい。
(文責・山上高弘校長、執筆・河邉正人研究主任)