管理職研修「審査論文をどう書くか」(120)

管理職研修「審査論文をどう書くか」(120)
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論文テーマ

 子どもが、同級生からインターネット上に誹謗(ひぼう)中傷の書き込みをされ、いじめられているという連絡が保護者からありました。調べたところ書き込みをした子どもが特定され、書き込みを削除することができました。その後、教頭として担任や他の教員にどのような指示を出しますか。

 

 本課題は、いじめに関わる指導と再発防止策を、教職員と専門的な知識を有する者が連携して組織的に取り組むことが重要であり、教頭の視点で具体的に述べる必要がある。

 生徒指導提要には、「インターネット・携帯電話に関わる問題」についての記載がある。その内容も再度確認しておくとよい。しかし、机上の空論にならないよう、現任校などの現状や課題を示し、より具体的な策を記述することで説得力のある論文となる。

 インターネット上のトラブルを防ぐためには、生徒のネットモラル向上が重要である。そのためには、教職員や保護者、専門家からの指導に加え、生徒が主体的にネット利用について考える機会を設けるなど、さまざまなアプローチの仕方が考えられる。「チーム学校」の実現という視点も大切にしたい。

はじめに

 学校で聞く生徒の会話の中には、インターネットに関わる話題があふれている。中学生のスマートフォンの所持率が80%を超えるという調査結果もあり、インターネットは生徒にとってとても身近な存在となり、生活の一部である。本課題のように、インターネット関連のトラブルは、現任校でもしばしば起きる問題であり、ネットモラル向上に関わる指導は、欠かせない指導である。私は、教頭として本課題の解決に向けて、次の3つの対応を校長の指導のもと実行したい。

「いじめは許さない」組織的な指導

 いじめへの対応は「学校いじめ防止対策基本方針」に沿って行うことが原則であり、複数の教職員や専門家が関わり合って指導に当たる。本課題の場合、被害生徒のフォローと加害生徒への指導、保護者への対応に加え、全校生徒のネットモラル向上に向けた指導が対応の中心として考えられる。

 現任校では、教職経験が少ない教諭が担任を務めており、生徒指導の経験があまりない教諭も多い。そのため、生徒指導担当教諭と連携して学年主任や担任など複数の教職員で指導に当たるように指示をする。また、複雑な環境を抱えた生徒も多く在籍するため、個に応じた指導が求められるが、被害に遭った生徒の安全を確保するために、「いじめは許さない」という態度を徹底するように助言する。指導の後には、指導の様子などを報告、相談するように伝え、保護者への対応も共に考える。

 指導する教員が悩みを一人で抱え込まないような配慮をする。そして、今後の指導体制を共通理解する機会を設ける。全ての教職員で被害生徒と加害生徒をフォローできる体制づくりに尽力する。

未然防止と早期発見に向けた研修

 インターネット上のいじめは、教職員が把握することが難しい。そのため、事後の対応になることが多く、被害が大きくなっている場合もある。現任校でも、未然防止策と早期発見につながる手だてを考えることが課題である。

 課題の解決のためには、研修を通じて、教職員の意識改革をすることが重要であると考える。そのために、生徒指導担当や情報担当、専門家と連携して、教職員に情報モラル研修を実施する。その中で、教育課程全体でネットモラルに関わる内容を取り扱うことが重要であることを示し、教職員一人一人が担当している授業や活動の中でできる、ネットモラルに関わる内容を明確にする。教科や道徳、特別活動など、さまざまな機会で繰り返し指導する体制を整える。

 情報担当など、一部の教員だけが指導すればよいのではなく、全教職員で繰り返し指導するという意識改革を行いたい。また、早期発見につなげる取り組みとして、教職員がインターネットの利用状況を把握するなど、アンテナを高くする取り組みを考え、早期発見に努める策を講じたい。

ネットモラル向上につなげる保護者周知

 インターネット上のいじめを防止するためには、家庭の協力が不可欠である。私は、学年主任と連携して、PTA総会や授業参観など、保護者が集まる機会に協力を呼び掛ける。PTAが作成した「スマホ利用9か条」を利用し、家庭のルールづくりを呼び掛けたい。また、養護教諭とも連携して、適切なメディアの利用を促す家庭「メディアチェック」運動を企画する。保護者にネットトラブルに関する情報を提供することで、ネットモラル向上につなげたい。学校と家庭が連携することで、生徒のインターネット環境を整えたい。

まとめ

 教師の仕事は、子どもの未来をつくる。本課題のインターネットに関わるいじめ問題のように、子どもを取り巻く環境が変化しても、不易の部分は変わらない。私は、教頭として「チーム学校」としての機能向上のため、校長の指導のもと、職員、保護者、地域と連携を図り、チームとしての力を高め、職務に対して全力を尽くす決意である。

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