先日、市の通級部会で新しく通級担当となった先生から、「自立活動」をどのように進めていくか悩んでいるとの話を聞いた。「遊び」のようになってしまっていいのかという葛藤があったようである。「遊び」から「学び」が得られることをその先生に伝えると、安心した様子であった。
2008年から3年間、附属特別支援学校に勤めた経験がある。言葉での意思疎通が困難な子どもたちとの授業に悩んでいた中、「楽しくなければ授業じゃない」と先輩に教えていただいた。そこで、リンゴのおもちゃを使った買い物ごっこをA君と行った。大小のリンゴを並べ、「小さいリンゴをください」と手を出すと、小さいリンゴを渡してくれることを期待したが、かなわなかった。
「買い物ごっこは楽しいはず」と思ったのは教師であり、A君にとって楽しいとは限らなかった。
再び悩んでいると、「何を楽しんでいるのかを遊びの中から見つけるとよい」と教えていただいた。しばらく様子を見ていると、A君はリンゴを目の高さに上げ、落とし、転がっていく様子を見て笑っていた。A君は物の動きを楽しんでいた。そこで、転がるしくみをつくって授業に取り入れるとA君は率先して大小弁別の課題に取り組んだ。
「楽しくなければ授業じゃない」の言葉には続きがある。「楽しいだけでは授業じゃない」である。教師が子どもの実態を把握し、遊びの延長線上に、どのような課題を設定するのかが教師の腕の見せ所である。
(越智真剛・知多市立岡田小学校長)