地域連携で郷土愛学ぶ 都教委、へき地・小規模校研究発表会

地域連携で郷土愛学ぶ 都教委、へき地・小規模校研究発表会
質疑応答に応じるさくら小、檜原中両校の登壇者=撮影:水野拓昌
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 東京都教育委員会と東京都へき地教育研究協議会による今年度へき地・小規模校教育研究発表会が8月1日、都内で開かれた。小中学校2校が研究発表を行い、それぞれの授業や教育実践事例を報告。会場に集まった教員や都教委関係者ら約120人が耳を傾けた。

 1998年度に始まった研究発表会は今回が27回目。大島町立さくら小学校(石原一彦校長、児童91人)が「大島まるごと学校―大島で学ぶ・大島を学ぶ・大島から学ぶ―」を、檜原村立檜原中学校(中村祐子校長、生徒23人)が「檜原村の今と未来に貢献する生徒の育成―総合的な学習の時間を中心とする“つなごう未来の檜原プロジェクト”を通して―」をそれぞれテーマに掲げて実践事例を説明した。

島内人材「ふるさと先生」に

 大島は伊豆諸島の中では最も都心に近いが、それでも120キロ離れている。島内に小学校は3校あり、さくら小は2005年度、島北部の3校が統合されて創立。グラウンドを挟んで町立第二中学校があり、合同運動会を開くなど小中連携も盛んだ。

 研究発表では高嶋佑樹副校長と阿部幸太主幹教諭が登壇。児童撮影の学校紹介動画が流された後、高嶋副校長は「授業研究と地域理解の教員研修の2本立てで校内研究を進めることとした」と説明した。地域に根差した教育として19年度から「大島まるごと学校」をキャッチフレーズに、島内で活躍する人を「ふるさと先生」として学習に招き、児童が学習した成果を地域で発表する機会も設けている。児童が専門家から話を聞くなどの体験的学習を多く行うことで、自らの考えを広げ、理解を深めることができたいといい、郷土愛を深めることにもつながっていることなどが説明された。

 また、教員研修は全教員が大島に関するテーマを設定して1年間かけて研究し、インタビューや体験も交えて大島を深く知るような取り組みを進めている。地域住民とのコミュニケーションを図ることで、学校と地域の連携を深めることにもつながるという。

 最後に阿部主幹教諭が「多岐にわたる地域資源を整理して教員の異動時に引き継ぐことや、総合的な学習を中心に児童の発達段階に応じて指導方法を整理する必要がある」と課題を挙げた上で、「これからも児童の未来を切り開く力、自信を持って生きる力が身に付くように指導していく」と意気込みを示した。

村の課題、解決策を考えるプロセス

 檜原村は島しょ部を除き、都内唯一の村で、村内は小学校1校、中学校1校。11年度に小中一貫教育校檜原学園檜原小・中学校が開園した。「9年間の系統性・連続性を意識した指導」「小中指導交流の充実」「学びのカルテの活用」などを推進。村内全域を学区域とする檜原中は、バス通学者が9割程度を占めている。

 研究発表では、青木奈央、瀬沼祐子両主任教諭が総合的な学習で地域貢献に的を絞った探究学習の実践を紹介。全学年1学級で、多様な他者と協働して学び合う機会が少ないという課題に対して、①地域の自然・産業・文化や人々に触れ、檜原村を知る②他地域との関係や歴史などの相違点を学び、檜原村を深く理解する③檜原村の持続可能な未来像を見据え、現在とのギャップから問題点を見いだし、課題を設定して策を考え実行する――という学びのステップで探究学習を進める「檜原メソッド」を考案。小規模校の強みを生かして、生徒一人一人へのきめ細かな支援を実践していると説明した。

 探究学習のプロセスを、①主題の設定②情報収集・分析③知識・理解の深化④問題の発見⑤課題の発見⑥解決に向けた情報収集・分析⑦解決策の提案・実行⑧振り返り――と細分化し、9年間の積み上げによって、問題発見・解決能力や情報活用能力、コミュニケーション能力、表現力、論理的思考力を育成していこうと試みだ。

 ただ、質疑応答ではICT活用について質問があり、青木主任教諭は「山間部なのでインターネット環境は万全ではなく、1人1台端末の活用でもフリーズしてしまうこともある」と課題を挙げた。

 この後、パネルディスカッションで登壇した東京学芸大学教育学部の柴田彩千子(さちこ)准教授は「さくら小の事例では教員が地域と学校を結ぶファシリテーターというマインドを持っており、取り組みが順調に進んでいる要因の一つだと感じた。檜原中の事例では論理的思考力を育てる思考ツールとしての学習マップの活用が特徴的で、他の地域でも応用可能な取り組みだ」と、それぞれの活動を評価した。

 

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