GIGAスクール構想が進む一方で、多くの学校で十分な通信速度が確保されていない中、文部科学省はGIGAスクール構想支援体制整備事業として来年度予算の概算要求に88億円を計上し、学校の通信ネットワーク環境改善などを進めることを決めた。盛山正仁文科相は8月29日、学校のネット環境改善に関連する4団体の代表を招いて協力を要請した。
同省を訪れたのは、テレコムサービス協会の北岡隆之会長と電気通信事業者協会の髙橋誠会長、日本インターネットプロバイダー協会の久保真会長、日本ケーブルテレビ連盟の今林顯一理事長の4人。
同省が昨年11月に全国の約3万2000校を対象に行った通信ネットワーク環境の調査では、同省が定めた推奨帯域を満たす学校は全体の2割程度にとどまった。また、全自治体の約6割でネットワーク環境の課題などを確認するアセスメントが行われておらず、ネットワークアセスメントの徹底や通信ネットワークの着実な改善が課題となっている。また、インターネットに接続するまでの回線契約の内容が不十分なケースも多いとみられている。
こうした状況を受けて、同省は来年度予算の概算要求に「GIGAスクール構想支援体制整備事業」として88億円を盛り込み、学校の通信ネットワーク環境の改善に乗り出すこととした。1校当たり、ネットワークアセスメントの実施に100万円、アセスメント結果を踏まえた機器更新などネットワーク環境改善に200万円、回線契約の切り替えにかかる初期費用支援に40万円を上限に、国が3分の1を補助して改善を支援する方針。また、次世代校務DX環境の整備に向けた支援や、教職員・ICT支援人材のための研修など学校DXのための基盤構築も支援する。
盛山文科相は4団体の代表との面会で要望書を渡した後、「それぞれ所属する事業者に状況を理解していただいた上、全国の学校のニーズに見合った高速の通信サービスが利用可能となるよう協力をお願いしたい」と要請した。要望書では、学校のネットワーク改善を進める上で、自治体や教育委員会が学校規模に対応した帯域の通信サービスを適切に選択できるよう協力を求めている。
これに対して各団体の代表はいずれも協力に前向きな姿勢を示し、電気通信事業者協会の髙橋会長は「非常に重要な政策であり、子どもたちの学びを実現できるように、各学校の課題の状況を踏まえつつネットワークの充実改善に向けて協力したい」と述べた。
同省によると、学校と事業者との回線契約は、通信速度を確保できる「帯域確保型」が望ましいものの高額であることなどから、自治体全体の約3%にとどまっている、一方、95%の自治体は「ベストエフォート型回線(共用回線)」で契約しているが、この中でも共有先が少ないサービスや比較的通信速度が速いサービスの事例もあり、各自治体に通信速度向上に向けて契約の見直しを促すとともに、事業者にも多様なサービスを展開してもらい、全国的にネットワーク環境の改善につなげたいとしている。