(提言)病気を診ずして病人を診よ

(提言)病気を診ずして病人を診よ
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尾張小中学校長会長 森 弘徳

 私事で恐縮ですが、昨年11月にインフルエンザ罹患(りかん)後、2週間隔離入院しました。

 入院した部屋に「病気を診ずして病人を診よ」という、その病院の理念が掲げられていました。

 入院中、この言葉の意味が気になっていた私は、退院後調べてみました。そして、これは、日本医学会で「ビタミンの父」と言われ、東京慈恵会医科大学附属病院創始者である、高木兼寛(たかぎかねひろ)ー元海軍医師ーの言葉だとわかりました。

 入院したことは不徳の致すところでしたが、主体的に新たな学びができ、知識を得ることの喜びを味わうことができました。

 この言葉には、病気だけを診て単に治療するだけでなく、この病み悩める人に全力で尽くし、不安を取り除き、慰め、生きる勇気を引き出し、満足感を得られるようにしなければならない、という意味が込められているそうです。医療人と呼ばれる方々が大事にしている理念だと知りました。

 私が入院中、主治医を始め病院の方々は、親身になって寄り添っていただいたり、仕事復帰への不安を聴いてくださったりしました。そして、「しっかり治せば大丈夫ですよ」と勇気づけてくださいました。医療現場の皆さん一人一人が、「病気を診ずして病人を診よ」を実行していただいていたのだと実感しました。

 他方、教育の場では、2022年12月「生徒指導提要」が12年ぶりに改訂されました。そして、課題予防・早期対応といった課題対応の側面のみならず、子供たちの多様化が進み、さまざまな困難や課題を抱える児童生徒が増える中、学校には、子供の発達や教育的ニーズを踏まえつつ、一人一人の可能性を最大限伸ばし、子供たちに寄り添う教育が求められています。医療に携わる方々と教育に携わる私たちでは、立場は違いますが、その理念は共有できると思います。

 これらを踏まえ、私は、これからの教育は、子供の課題に目を向けるばかりではなく、一人一人に寄り添い、学校生活での不安を取り除き、未来に踏み出す勇気を与え、その子その子の可能性を最大限伸ばしていくよう支援することこそが大切だと考えます。

 学校を、子供たちが自らの可能性を見いだし、未来を切り開く資質や能力を発揮していく場にしていきたいと切に思います。

 (清須市立新川中学校長)

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