外部の人材や資金を学校教育に提供する取り組みを推進しようと、経産省はこのほど、自治体や民間企業などの関係者が参加するイベント「Education×Finance Forum Japan 2024」を東京都内で開き、先進事例を踏まえた普及への課題を話し合った。特に資金調達では、資産運用の一環や寄付によって集めた資金を基に運用し、その運用益を奨学金などの事業に充てることで、持続可能な仕組みにする手法が注目された。
7月に経産省の「イノベーション創出のための学びと社会連携推進に関する研究会」が取りまとめた報告書では、学校が社会に開かれた学びを展開していく上での課題として、教育予算の裁量不足や硬直化、外部連携をする際のマッチングの難しさなどを挙げ、クラウドファンディングなどの活用による外部からの資金調達に乗り出している自治体も限られていると指摘。こうしたヒト・モノ・カネといった資源を持続的に獲得し、多様な学びを継続して提供できる可能性を検証する必要性を提言した。
これを受けて開催されたフォーラムには約250人が参加し、テーマごとに複数のセッションが設けられた。中でも「企業や富裕層が持つ資産の運用を通じた社会課題解決」をテーマにしたセッションでは、まず日本ファンドレイジング協会の鵜尾雅隆代表理事が「米国や欧州の財団のほとんどは自分たちで基金をつくって運用して、その運用益で助成金を出しているので、もともとの基本財産は減らない構造でやっている。日本はほとんどがキャッシュアウトモデルで、10億円が入ってきても、毎年1億円ずつ使っていけば10年でなくなる。いろいろな理由でそうなっているが、子どもたちの未来のために、この状態のままでいいのか」と問題提起。
続いて、徳島県神山町に開校した神山まるごと高等専門学校の松坂孝紀事務局長は、企業版ふるさと納税を活用して寄付によって38億円超の開校資金を集めたことや、企業が1社10億円の出資または寄付でつくられた奨学金基金の運用益を寄付する形で全学生の学費を無償化していることなどを解説した。
さらに、奨学金サイトを運営するガクシーの松原良輔代表取締役も、三菱UFJ信託銀行とタッグを組み、来年から始める拠出金・寄付金を集めた運用益を奨学金に充てる「サステナブル奨学金」の構想を紹介。「持続的な若者の支援はこういう形でなければ続かない。日本でもこういうのを広めたい、知ってもらいたいという思いで立ち上げた」と語った。
また、ふるさと納税やクラウドファンディングなどの活用をテーマにしたセッションでは、神奈川県鎌倉市教育委員会の高橋洋平教育長が、市教委でクラウドファンディングをして集めた資金を基に、学校が希望する地域や企業などと連携した新しい学びに充てていく「鎌倉スクールコラボファンド」の仕組みを発表。通常の予算と異なり、年度途中でもこうした新しいプロジェクトに速やかに資金を投入できるメリットを強調した。
高橋教育長は現在の課題として「最初は寄付が集まるが、だんだん集まりにくくなる」と説明。売り上げの一部を寄付する自動販売機を設置して周知をしたり、信託銀行と連携して、運用益をふるさと納税するモデルを検討したりしていることを明かした。