文部科学省は9月13日、外部専門人材の教師への活用拡大に向けて、オリンピックやパラリンピック・デフリンピックに出場経験のあるアスリートを公立学校の教師として任用する場合、加配定数の措置を行うことを発表し、同日、都道府県教委などに通知した。また、アスリートの学校教育への参画を後押しするため、教職に関心のあるアスリートのリストを作成して、来月上旬にも全国に送付する。盛山正仁文科相は同日の閣議後会見で「こうした取り組みでの加配措置は初めてであり、積極的に活用してほしい」と述べた。
同省は、中教審が多様な専門性を持つ人材を学校組織に積極的に取り込む必要性を示していることを受けて、卓越した競技能力のみならず、目標に向かい努力し続けるマネジメント力などを持つアスリートの教員としての活用を検討してきた。パリオリンピック・パラリンピックを契機に、特別免許状も活用したアスリートの学校現場での活用を後押しする方策を公表した。
具体的にはオリンピアンを含めて教職に関心のあるアスリートのリストを作成して全国の教育委員会などに送付し、都道府県教委などで教員として特別選考などの実施を検討してもらう。すでに競技団体を通じてリストの作成を進めており、来月上旬にも全国に送付する予定。
リストを基に都道府県教委などで採用され、特別免許状を取得したアスリートには、教職としての専門性に不安を持つことも考えられるとして、教職として重要な基礎知識や技能を学べる「オンデマンド研修パッケージ」を、採用権者を通して提供する。採用予定者はパッケージから必要な研修を受講できる。
さらに教師として採用されたアスリートのうち、オリンピックとパラリンピック、デフリンピックに日本代表として出場した経験を持ち、特別免許状により職に就く場合は、オンデマンド研修を受講していれば、加配定数の対象として措置することを決めた。
同省が昨年実施した外部人材活用事業によると、教職に関心のあるアスリートは約180人いたことに加え、学校現場で児童生徒や他の教師にも刺激になるなど、肯定的な影響が見られたという。
こうしたことから、同省ではアスリートの教師としての学校教育への参画は意義があるとして、採用したアスリートが単一の学校に勤務することに加え、例えば小中学校兼務で小学校では体育科、中学校では部活動指導にあたるケースや、複数の中学校を兼務してチーム・ティーチングで各校の保健体育科の指導を担当するなどのケースも考えられるとしている。
盛山文科相は会見で、「オリンピックやパラリンピックなどで活躍したアスリートには、専門知識やそうした舞台に立つまでの経験・努力など、いろいろな背景があると思う。そうした力を生かして学校の教育活動に参画してもらうことは、児童生徒や他の先生にとってもプラス効果があると考える」と述べ、積極的な活用を呼び掛けた。