中学生時代、私の心をとりこにした映画(テレビで放映化されたものでしたが)が3つあります。菅原文太さん主演「トラック野郎シリーズ」、森繁久彌さん主演「社長シリーズ」、渥美清さん主演「寅さんシリーズ」です。
とりわけ「男はつらいよ」は、当時まだ映画館で上映されており、私が中学校を卒業した年の夏は、シリーズ30作目の作品でした。私はこのタイミングで寅さんファンクラブに入会しました。
寅さんに、私が魅せられた理由は、渥美さんの役者としての持ち味というか、人間味だったと思います。
どの作品にもマドンナが登場します。浅丘ルリ子さん、竹下景子さん、吉永小百合さん、大原麗子さん、松坂慶子さん、栗原小巻さん、八千草薫さん…。30作目は田中裕子さんでした。みんなかわいらしかったですね。
映画では、寅さんがマドンナに恋をし、最後はふられてしまうというのが定番です。しかしながら、私が注目したのは「相談役」としての寅さんの姿です。
マドンナたちがどうしてあんなに楽しそうに、心を割って話ができるのか。寅さんにはどこか隙があるのですが、その「隙」が、安心感を与えるのだというのが私の見解です。
教師は役者。この言葉が大好きです。時間的にも肉体的にも精神的にも、魅力あふれる「隙ある姿」を演じ切りたいと思っています。
(長谷川光巨・東郷町立東郷中学校長)