「乗ずる数」の見直しを 教員養成部会での論点に委員提案

「乗ずる数」の見直しを 教員養成部会での論点に委員提案
今後の教員養成・採用・研修に関する論点について話し合った教員養成部会=YouTubeで取材
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 「令和の日本型学校教育」を支える質の高い教師の確保に向けて、中教審初等中等教育分科会教員養成部会は10月1日、第144回会合を開き、これまでの教員養成・採用・研修に関する施策の取り組み状況や課題を踏まえ、今後議論すべき観点について委員間で意見交換を行った。委員からは少子化が進んでも教員を減らさずに充実させていくため、教職員定数の算定に用いられる「乗ずる数」の見直しの必要性や、教職大学院と大学院の博士課程の接続を検討すべきだという意見などがあった。

 全国的に教員不足が課題となる中で、文部科学省では2022年の中教審答申「『令和の日本型学校教育』を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について」に基づき、教員採用試験の実施時期の前倒しや特別免許状を活用した多様な教員人材の確保、四年制大学でも二種免許状の教職課程を特例的に設置できるようにするなどの取り組みを進めてきた。

 この日の会合では、8月に中教審が「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」を答申したことを受け、質の高い教師の確保に向けて、新たに取り組むべき改革などを議論した。

 真島聖子臨時委員(愛知教育大学学長補佐)は、教員を増員する議論が必要だと強調。教職員定数の算定に際し、学級数に対して乗ずる係数(乗ずる数)を調整しながら、少子化で児童生徒数が減少していっても教員数を維持していき、実質的に学校現場に人を増やしてゆとりを生み出そうとする考えがあることを紹介し、「多様な教職員集団をマネジメントし、若手が増えている中で質の担保をどうするのかといったときに、教員の増員数という観点の議論を俎上(そじょう)に載せていかないと根本解決はできないと思う。『乗ずる数』にいろいろな変数を加えていきながら、(児童生徒数が減っても教員数を維持していくことを)ソフトランディング的にやっていく議論は絶対に必要だ」と提案した。

 この意見に関し、山辺恵理子臨時委員(早稲田大学文学学術院講師)は「最低でもこういうことを守り、こういうことができる人を教員と呼ぶという議論をさらに進める必要がある。その教員のミニマムエッセンスに入っていない業務に関しては、職員に任せてもいい。(ミニマムエッセンスの)定義ができれば切り離しもできると思うので、職員の雇用拡大によって、教員の負担軽減をますます進めていただきたい」と、教員以外の職員を増やす視点も補足した。

 また、教職大学院に博士課程を設ける可能性に関し、複数の委員から意見が出た。

 部会長代理の松木健一臨時委員(福井大学理事・副学長)は、教職大学院で教える大学教員を養成する観点などから、「教職大学院の上にドクター(博士課程)を置くのが難しい状況になっている。教職大学院とは異なる修士課程をつくらないと、ドクターがつくれない。教職大学院のドクターについて検討していただきたい」と要望した。

 これに対し貞廣斎子委員(千葉大学副学長・教育学部教授)は「現行の教職大学院ではあまりにも実践知のみが強調されているため、学校の教員も学びのリフレッシュになり得ない。それ故に、一部の人の選択肢にしかならないのではないかと危惧している」と指摘した上で、教職大学院から博士課程への接続を視野に入れるべきだと述べた。

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