1年間の任用となる会計年度任用職員の更新が上限に達したことから公募を受けたところ、不合格とされたスクールカウンセラー(SC)ら10人が10月9日、昨年度までSCとして採用されていた東京都を相手に、雇い止めの撤回と損害賠償を求めて東京地裁に提訴した。都で昨年行われた公募で、同様に雇い止めにあったSCは250人に上るとみられ、原告側は、このような雇い止めはSCの専門性をないがしろにし、子どもや学校関係者に多大な影響を及ぼすと、都の対応に警鐘を鳴らしている。
2020年度から会計年度任用職員制度が始まったことに伴い、都ではそれまで「特別職非常勤」だったSCを一般職非常勤の会計年度任用職員に移行。「特別職非常勤」の頃は、原則として1年ごとの任用を繰り返すものの、希望すれば更新され、継続して働くことができていたが、会計年度任用職員では、1年ごとの任用で更新限度は4回までとされ、5年間勤務すると公募を受け直さなければならなくなった。
その公募が昨年12月に行われたが、それまで東京都のSCとして勤務経験のある250人が不合格となり、労働組合の東京公務公共一般労組・心理職一般支部(心理職ユニオン)が都と団体交渉にあたっていた。しかし、この団体交渉を通して、採用の評価は面接のみで、これまでの都のSCとしての勤務実績などは考慮していないことや、採用基準が明らかにされず、雇い止めも撤回されなかったことから、提訴に踏み切った。
原告側は、SCのように専門性と継続性が求められる業務で、会計年度任用職員制度における更新回数の上限ルールを適用することは合理性がなく、面接のみで合否を判断したのも、能力によって採用を決めるとされる地方公務員法に反していると主張。24年度以降の東京都のSCとしての地位の継続と、それに伴う給与・手当相当額、精神的苦痛を負った慰謝料などの損害賠償を求めた。
提訴にあたり厚労省で記者会見した原告の一人は「安定して働くことができない。突然切られることがある。こうした意識がまん延すると、SCという仕事を生業として続けていくことが難しくなる。それが当たり前となれば、SCの質を担保していけるのかということに大きな危機感を抱いている」と、専門職としてのSCを軽視する対応だと指摘。
「複数の学校を兼任しているSCもいるので、何百校もの学校で、4月にSCが突然交代する事態に直面したと思う。一人のSCの背後にどれだけの子ども、保護者、教職員がいて、その不安が積み重なっていったのか、どうして想像できないのか」と、学校現場に与えた影響を懸念した。
原告代理人を務める平和元弁護士は「SCの地位を安定させることが必要だ。不安定雇用のままでは良い教育に携われないということを訴えたい。さらには会計年度任用職員制度の問題点をはっきりさせて、改善させるとともに、何年働こうが昇給もなく身分も不安定でスキルアップもできない、公務員であっても身分の保障がないこの制度を改革できれば」と、裁判の社会的意義を強調した。