学習指導要領の部活動規定「社会教育の位置付けを」 文化芸術WG

学習指導要領の部活動規定「社会教育の位置付けを」 文化芸術WG
中間とりまとめの骨子案について議論した第3回会合=撮影:徳住亜希
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 文化庁は10月24日、部活動改革実行会議にひも付けられた「地域文化芸術活動ワーキンググループ」(主査:北山敦康静岡大学名誉教授)の第3回会合を文部科学省とオンラインのハイブリッド形式で開催し、12月予定の中間とりまとめに向け、これまでの議論を踏まえた骨子案を発表した。骨子案では改革の理念として、「子どもたちが継続的にスポーツ・文化芸術活動に親しむ機会の確保」が主目的と明記。「地域移行」の名称については理念を的確に表すため、「地域展開」への変更を提案した。次期学習指導要領での部活動の取り扱いを巡っては、委員から「『学校教育の一環として』の文言は古い」「社会教育であることを明確にすべき」などの意見が相次いだ。

 骨子案は「生徒のための改革」とうたった『改革の理念』をはじめ、『地方公共団体に伝えるべきこと』『地域クラブ活動の在り方』『学習指導要領における取扱い』などの7項目で構成。国は2023年度から25年度までを部活動の「改革推進期間」としているが、26年度からの6年間を「改革実行期間」と位置付け、平日の活動についても地域への移行・連携を推進していく方針だ。

 骨子案では部活動改革について、「地域全体で関係者が連携して支え、生徒の豊かで幅広い活動機会を保障」と明記した。この理念を的確に表すためとして、地域移行に代わる「地域展開」への名称の変更を提案。前回のWG会合などで、地域移行の名称が「ただ地域に移すだけというイメージで誤解を招きやすい」との指摘があったことを受けたものだ。また地域展開の具体的手法を考えるにあたり、骨子案では「教員の負担軽減が図られることについても考慮」するとしている。

 『推進期間の成果等』については「先行自治体の好事例を通し、実証事業の活用や問題解決などのノウハウが明らかになったことは大きな成果」(静岡県教育委員会義務教育課指導監の池上潤子委員)とする一方、指導者の質の保証、生徒の移動手段、安定的な運営体制の構築など課題は依然多い。

 富山県朝日町教委の木村博明教育長は、自治体の立場から「改革の理念は素晴らしいものだが、持続可能な運営を実現するには人・金・物が必要」と話し、中でも財源確保に頭を悩ませているとして「国や都道府県、地方教育団体の後押しがあると進めやすい。その一文を入れると安心感を得られるのではないか」と述べた。

 学習指導要領での部活動規定について、骨子案では「教育的意義を有する活動」であり「地域クラブと学校との連携が重要」とした上で、指導要領改訂に合わせて記載の在り方を検討し、来春予定の最終とりまとめまでに議論を深めるとしている。これに対し委員からはさまざまな意見が上がった。

 全日本合唱連盟の戸ノ下達也理事は「次期学習指導要領の中で、地域移行・地域展開が社会教育であることをはっきりさせていただくことが必要」と強調。また武蔵野美術大学の大坪圭輔名誉教授は「ここまでの議論を踏まえれば、指導要領にある『学校教育の一環として』の文言は不要ではないか。また現行の指導要領では『(学校が)連携などの運営上の工夫を行い、さらに体制が整うようにするもの』と読めてしまうため、これもやはり次期指導要領では表記の仕方を考えるべきではないかと思う」と指摘した。

 一方、全日本吹奏楽連盟の星弘敏常任理事は「学校教育を通して感じるのは、部活動が人格形成の場でもあるということ。学校教育との兼ね合いが全くなくなってしまうとコンクールで金賞を取るだけのクラブ、優勝するだけの地域クラブ活動になりかねない」と懸念を示し、「学習指導要領の中に部活動と関連付けた文言を明記してもらった方がいい」と話した。

 国は12月の部活動改革実行会議で骨子案の中間とりまとめを行った後、関係団体に対しヒアリングを実施する予定だ。

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