「子どもに委ねる学び」を考える 兵庫県芦屋市立岩園小で公開授業

「子どもに委ねる学び」を考える 兵庫県芦屋市立岩園小で公開授業
同じレゴの数で形を変えると重さは変わるのか調べていた児童=撮影:松井聡美
【協賛企画】
広 告

 子どもに委ねる学びを考える――。官民一体となって兵庫県芦屋市の教育について考えるイベント「Ashiya Education Day in autumn」が10月25日に行われ、同市立岩園小学校(横田薫校長、児童805人)で、「子どもに委ねる学び」を実践した授業が公開された。3年生の算数、4年生の社会、5年生の図工で、単元内自由進度学習など、子どもたちが自分で学びを選択し、決定する授業が展開された。

一斉学習で知識・技能を学んだ後、それを生かした探究的な学びを

 「えー、思っていた重さと全然違った」

 「もう一回、やってみようよ!」

 授業開始時間にタブレット端末を抱えて入ってきた子どもたちは、教員からの説明を聞くと同校のラウンジに展開された「重さ」について学ぶ各コーナーに散っていき、すぐさまいろいろなものの重さを量りだした。

 この日、3年生の算数「重さ」の単元では、自分のための最適な学び「自分学習」が展開されていた。同単元では1~2時間目に一斉学習で基本的な知識・技能を学んでおり、3~5時間目で「自分学習」に取り組んでいる。

 この単元を学ぶ期間中は、ラウンジを「量感」「計測」「計量」の3つの領域に分け、さまざまなはかりや教材を用意。各領域を子どもたちが自由に選択した順序で1時間ずつ、計3時間で学んでいく形だ。

 例えば、砂糖やペットボトル、トイレットペーパー、袋ラーメン、ノートなど、子どもたちの生活でもよく見るものがたくさん用意されていたのは、「量感」の領域に用意された「1キログラムピッタリ賞チャレンジ」のコーナー。子どもたちは「これとこれで1キログラムぐらいかな?」と組み合わせを考えながら箱に入れ、はかりに載せていく。

 「計量」の領域に用意された「シーチキン単位の世界」コーナーでは、いろいろなものがシーチキン何個分かをてんびんで調べ、「1グラム」の代わりに「○シーチキン」という単位で子どもたちが計測している。

 クイズなどゲーム性も取り入れられた各コーナーで、子どもたちは自然と1~2時間目で学んだ知識や技能を復習したり、応用して考えたりしながら、夢中になって学んでいる姿が印象的だった。

タブレット端末で撮影し、学んだことをまとめて提出していた=撮影:松井聡美
タブレット端末で撮影し、学んだことをまとめて提出していた=撮影:松井聡美

子どもの生活にひも付く学びの仕掛けを

 公開授業に参加した各自治体の教育委員会の指導主事や教員からは、「誰一人取り残さない学びになっていた」「子どもたちが楽しそうに学んでいた」と評価する声が上がっていた。

 一方で、公開されたどの授業においても教材準備などにかなり時間がかかっている様子が見られたことから、「実際にやるとなると、準備が大変そう」との意見も出ていた。

 それに対し、同市教委の担当者は「岩園小では、こうした『子どもに委ねる学び』において、教材研究や教材準備なども学年で取り組んでいる。なぜこの仕掛けが必要なのか、学年の教員全員が語れることが、学年で取り組む強みでもあり、良さでもある」と説明。また、今回使った教材などは、来年以降の同じ単元の学習でも引き続き活用することも検討されているという。

 授業後に行われた事後検討会では、3年生の算数について「学んだ概念をどれだけ実生活でも生かせるよう、授業デザインを考えているのか」という質問が上がった。

シーチキンなど、子どもの身近にあるものを教材として用意=撮影:松井聡美
シーチキンなど、子どもの身近にあるものを教材として用意=撮影:松井聡美

 授業者の近藤香織教諭は「これまでの重さの単元では、お道具箱など学校にあるものの重さを量っているだけだった。しかし、今回は意識して子どもたちの身近なものを教材として用意した。例えば、これからシーチキン缶を見れば、子どもたちは重さのことを思い出したりするのではないか」と話し、「今後もさらに子どもたちの生活にひも付いていくような学びの仕掛けを考えていきたい」と強調した。

 また、「どのような単元が子どもに委ねる学びに向いているのか」という質問に対して、近藤教諭は「子どもたちが主体的に動ける活動がメインになっているような単元がいいと思っている。また、教科書上で学べないようなことが多い単元、つまり知識・技能よりも、思考・判断が求められる単元が向いているのではないかと感じている」と話した。

広 告
広 告