東京都教育委員会はこのほど、教員志望者確保策の一環として公立学校教員採用セミナー「TOKYO教育Festa!」を開催した。今年で3回目となる大型イベントで、参加者も年々増えている。都教委では、大学3年生が1次選考の教職教養と専門教養を前倒し受験できる制度や社会人経験者特例選考など、多彩な選考方法を導入しているが、教員志望者の増加を狙って、こうしたセミナーなどのイベントや情報発信にも力を入れている。こうしたイベントは他の地域にも広がっており、栃木県でも今年度、初めての開催に踏み切った。
10月20日、ベルサール渋谷ガーデン(東京都渋谷区)で開催された「TOKYO教育Festa!」では「尾木ママ」の愛称で知られる教育評論家・尾木直樹氏が2年連続で講演したほか、現役教員による校種別セミナー、少人数の座談会コーナーなど現役教員の話が聞けるブースも多数用意された。20近いブースに分かれ、模擬授業の披露、参加者同士による授業づくり体験があり、都教委職員による勤務条件解説コーナーにも大勢の参加者があったという。教員志望者の大学生だけでなく、社会人や高校生も参加し、転職者向け個別相談のコーナーもあった。
都教委が大学での説明会や個別相談会など従来のやり方に加え、このような大規模イベントを開催したのは2022年度から。同年度は約500人が参加し、23年度は約900人、今年度は約1000人と順調に参加者を増加させている。都教育庁人事部選考課の石毛朋充課長は「イベント参加が選考の応募に直接つながるわけではないが、東京都の取り組みは情報として波及効果もある。教職への強い思いを持った人を採用したい。東京都の教員になることの魅力を発信するのは大事なことだ」と手応えを示している。
また、「教職のリアルを伝えたい」という狙いがあるという。各地の自治体が教員確保に苦心している背景には、長時間勤務、土・日曜日を含め休みが少ないといったイメージが浸透し、学校が勤務環境の厳しい「ブラック職場」とみられるようになったためだ。都教委のイベントでは、現役教員が仕事の魅力ややりがい、実際の勤務状況などを伝える点が大きな特徴。給与、休暇、福利厚生などの勤務条件については都教委担当職員がセミナー形式で解説し、合間には個別の相談対応も可能という。
東京都教員採用選考は2年連続で受験者数が増加し、ここ数年の下落傾向から持ち直した。大学3年生で1次選考の一部を前倒し受験できる制度や社会人経験者特例選考、キャリア採用選考、カムバック採用選考といった、ここ1、2年で導入・拡充した選考方法の改革に効果があったともみられるが、合わせて教員採用の独自ポータルサイトを開設するなど、情報発信にも力を入れている。「TOKYO教育Festa!」についても「教員採用に関してこれほど大きなイベントは、他に例はないのではないか」と自信を深めている。
栃木県教育委員会も10~11月にかけて「学校で働きたい人応援イベント」を開催している。学校での就業希望者向けにオンラインミーティングを10月に2回開催し、11月6日にも予定している。また11月23日にも、県庁で集合型ミーティングを開催。転職者を含めた学校で働く人のインタビュー動画を披露するほか、個別相談会を開く。
こうしたイベントは栃木県教委として初開催。担当者は「全国的な教員不足の中、人材掘り起こし事業として開催を決めた。教員免許を持っていながら教職に就いていない人や教員免許は持っていないが学校の仕事に興味を持っている人は少なからずいると思う。学校にはさまざまな役割があることを紹介したい」と説明する。
ここでは、教員免許を取得しながら教職に就いていないペーパーティーチャーや他業種からの転職希望者を中心とした参加者を想定。教員の仕事に興味を持ってもらうだけでなく、学校には非常勤講師、教員業務支援員など多種多様な仕事があることを知ってもらい、さまざまな人材を確保することで教員の働き方改革にもつなげたいという狙いがある。