政府は10月29日、自殺対策基本法に基づき2024年版の自殺対策白書を閣議決定した。小中高生の自殺についての分析では、22~23年、過去に自殺未遂歴のある場合、その過半数は1年以内で、小学生女子、高校生女子では1カ月以内の割合も高かったといい、厚労省では自殺リスクの高い自殺未遂者への支援を強化する姿勢を示している。
白書によると、23年の自殺者は2万1837人(男性1万4862人、女性6975人)で、このうち小中高生は513人。過去最多の22年の514人と1人しか差がないという高い状態だ。全体では減少傾向にあるものの、子どもの自殺者は増加傾向が続いている。
白書では、ここ数年のデータを含めて傾向などを分析。09~21年のデータで自殺の原因・動機を分類すると、小中高のいずれも「不詳」の割合が最多だが、小学生では男女とも「家庭問題」、中学生男女、高校生男子では「学校問題」、高校生女子では「健康問題」の割合が高かった。
また、小中高生の自殺は19年399人から20年499人と100人増加し、それまで年間400人を下回る状況だったのが、20年以降は500人前後という高い水準で推移している。男女別に見ると、男子は高校生を中心に18年221人から19年267人と、女子は中学生、高校生を中心に19年132人から20年219人と急増しており、高校生男子は「病気の悩み・影響(うつ病)」、高校生女子は「病気の悩み・影響(その他の精神疾患)」「不詳」「病気の悩み・影響(うつ病)」、中学生女子は「不詳」「家族関係の不和」「学業不振」といった原因・動機が増加していた。
そして、自殺者急増期(20~21年)とその前後を比較すると、女子では急増期に自殺未遂歴のある自殺者の割合が高くなった。また、統計で自殺未遂の時期が把握できるようになった22年以降を見ると、小中高別、男女別のいずれでも、自殺者のうち自殺未遂歴がある場合は「1年以内」が過半数を占め、「1年より前」や「時期不詳」を上回った。小学生、高校生の女子で「1カ月以内」の割合が高く、厚労省は「データを蓄積、分析して自殺未遂者への支援手法を強化する必要がある」と指摘している。
また、夏休みなど長期休暇明けに小中高生の自殺が増える傾向はこれまでも示されていたが、09~23年のデータを集計(新型コロナウイルスの感染拡大で休暇の期間が例年と異なる20年を除く)した今回の分析でも、8月後半に子どもの自殺が増加して9月1日が最多になっている点や、春休み明けの4月上旬も増加する点は過去の傾向に近かった。ただ、9月1日が突出した状況ではなく、その前後も分散して増加し、春休み明けの増加は過去の傾向よりも緩やかという特徴もあった。
夏休み明けの増加時期は、北海道・東北で他地域よりも2週間ほど早いという傾向も判明。厚労省の担当者は「北海道・東北では夏休み明けが1~2週間早い地域があることと関係しているかもしれない」という見方を示している。また、「相談窓口の情報など時期に合わせて集中的に啓発活動を進め、対策を強化したい」と話している。