(読者の窓)小・中の「学校文化」

(読者の窓)小・中の「学校文化」
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 20年以上小学校に勤務した後、中学校に転勤した。自主性を重んじる指導、「教科のプロ」が集う教師集団、学年主任を中心に動くシステム、日々発生する生徒指導や進路指導の課題、引退間近の試合に挑む部活動の生徒の真剣な姿。小学校とは違う「中学校の文化」に触れ、初心に戻る気持ちで多くを学んだ。

 その後、在外教育施設(日本人学校)に校長として赴任する機会を得た。着任した学校は、保護者から授業料などを徴収して運営され、校長は理事会にさまざまな報告を行ったり判断を仰いだりしつつ、日本全国から集った個性豊かな教師集団を束ねて小中一貫9学年の児童生徒の教育活動を推進する、という多種多様な側面で多くを求められる立場だった。職員室は、小学校担任たちの「小学校部会」と中学校教員たちの「中学校部会」で構成されるが、運動会(体育大会)など、全校行事では小中の教師が共に活動する。応援合戦の指導時、小の先生は「教える」というスタンス、中の先生は「生徒に考えさせる」ことに時間を割く。当然あつれきが生じる。小中それぞれの先生たちの思いをくみつつ「小中の学校文化」の違いを認め、互いの良さを生かせるよう、校長としてさまざまな働き掛けをした。自分自身が小中を経験したことで、説得力をもって進めることができた。

 教師は「経験から学ぶ」ことで成長する。若手中堅に限らず、経験を重ねた先生も、果敢に未知の経験をするとよい。私も、引退の日まで、その気概を持ち続けたいと思う。

 (栗本和明・名古屋市立大森小学校長)

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