公立学校の教員の給与の在り方を巡り、財務省が働き方改革の目標値をクリアすれば、給特法で定められている教職調整額を段階的に上げていく案をまとめたとの報道を受けて、給特法の抜本的な見直しを求めている「給特法のこれからを考える有志の会」は11月8日、文部科学省で記者会見を開き、財務省案は長時間労働の抑制に向けたインセンティブが強く働くとして、一定の評価をした。有志の会メンバーで岐阜県の高校教員の西村祐二さんは財務省案について、「現状で取り得る次善の策ではないか」と見解を述べた。
文科省では公立学校の教員の処遇改善策として、現状で月額給与の4%とされている教職調整額を13%に引き上げる方針を打ち出している。しかし、一部報道によると、財務省では11月11日に開催される財政制度等審議会で、授業以外の業務時間の削減や長期休暇の取得などの働き方改革を進め、教員の時間外勤務の全国平均が国の目標値を下回れば、翌年度の調整額を段階的に引き上げることを提案。将来的には時間外勤務を月20時間程度まで減らし、教職調整額を10%に引き上げた段階で、時間外勤務手当を支払う制度に移行することも検討しているという。
この報道を基に、給特法を廃止して労働基準法に基づく残業代を支払うことで、教員の長時間労働を減らしていくことを以前から提言してきた有志の会は、財務省案について①文科省や教育委員会、校長への残業抑制のインセンティブが強力に働く②将来的な「時間外勤務手当の支給」がオプションの一つとして明示されている③確かな残業時間を把握するために毎年、教員勤務実態調査が行われることが期待できる――といった点を考えられるメリットとして挙げた。
記者会見で西村さんは「文科省案と財務省案の2つを見たときに、1点目として確実な残業削減が求められていること、それに実効性を感じること、2点目に将来的な労働基準法への切り替えを示唆していること。そこから私は財務省案の方がはるかにマシで、言葉を変えると現状取り得る次善の策ではないかと考えている」と期待を寄せた。
また、有志の会のメンバーで、自治体や学校と連携して教員の働き方改革に取り組んでいる㈱ワーク・ライフバランスの小室淑恵代表取締役社長は「今回の改革で求められるのは、文科省案にしろ、財務省案にしろ、長時間労働改善の仕組みが組み込まれているのかが最大のポイントだ」と強調。支援してきた学校の事例を踏まえ、「管理職が業務削減の動機付けをどのようにしていくのかという、本気度が鍵だと思っている。現状の給特法は管理職が残業を命じたことにはなっていないという点で、給特法を維持したままでは解決しない。残業時間と支払う額が連動していない給特法の下では管理職に対し、残業時間が多いということを、責任を持って改善しようという仕組みになっていないため、労働時間の削減にはならない」と指摘した。
その上で、財務省案を実行する場合に求められる対策として、時間外勤務の把握を正確に行い、サービス残業の横行を防ぐなどの目的で、教員が管理職を評価する仕組みを導入すること、給特法を廃止する際は、5年程度の準備期間を設けつつ、段階的に着実な移行を進めていく必要があるとした。