秋のレビュー 外部人材活用に「予算に見合った効果へ改善を」

秋のレビュー 外部人材活用に「予算に見合った効果へ改善を」
文科省の外部人材活用を巡る事業の検証が行われた秋のレビュー=撮影:山田博史
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 国の事業の効果を有識者が点検する「秋の年次公開検証(秋のレビュー)」が11月15日、都内で行われ、教員の業務負担を減らすため外部人材を活用する文部科学省の事業が対象とされた。文科省が事業の効果を強調したのに対し、有識者からは「どれだけの効果が生まれているのか、分かりにくい」などとの指摘が相次いだ。取りまとめでは、「教員の労働時間の削減に十分な効果が出ているとは言い難く、予算に見合った効果が出るよう改善を図る必要がある」と、見直しが要請された。

 秋のレビューの対象となったのは、同省の「補習等のための指導員等派遣事業」。学校の業務が複雑化・困難化する中、教員の業務を補助する「教員業務支援員」や「副校長・教頭マネジメント支援員」「学習指導員」を配置する事業で、2024年度には121億円が予算化され、来年度の概算要求では163億円が計上されている。

 はじめに事務局側が、児童生徒当たりの教員数は増加しているにもかかわらず、時間外在校等時間が減少していないことや、国庫補助のある外部人材が拡充されているのに対して、市町村で交付税算定されている「市町村費負担事務職員」などが十分配置されていないなどと指摘し、「予算に見合った効果が上がっていない場合、改善を図るための仕組みをどう構築していくべきか」などと論点を提起した。

 文科省の安井順一郎財務課長は、同事業について、いじめや不登校、日本語指導が必要な生徒の急増で学校の業務が増えて長時間勤務が課題になる中、現場では働き方改革を進めており、教師の時間外在校等時間は約3割減っていることや、外部人材活用には全国の自治体から多くの要望が寄せられ、予算執行率は100%近いなどと説明。「教師などの業務を支援スタッフが担うことで、本来業務に注力して業務の成果も高めている」などと、その効果を強調した。

 これに対して外部有識者からは「3つの外部人材のそれぞれの目標設定、KPIがよく分からない。また、時間外在校等時間の縮減効果が上がっているというが、支援員の配置の効果といえるのか十分に分からない」と指摘する意見や、「本当に人手に頼る必要があるのか、人手に頼る必要があるのがこの業務なのか、この事業を国がどこまで負担すべきか」と、改めて事業の必要性を問う意見などが出された。

 こうした指摘について安井課長は「縮減した時間が支援員による効果かどうかの峻別は難しいが、量的な分析に加え、質的な改善の部分をどう示すかの工夫も考えたい。また、現在、校務DX化とともに学校と地域の役割分担も見直しており、全体としてマンパワーが不足している中、専門スタッフや支援スタッフを配置することで業務改善を図りたい」などと答えた。

 最後に有識者を代表して永久寿夫名古屋商科大学経済学部教授が取りまとめを行い、「外部人材の人数を拡充してきたものの、教員の労働時間削減に十分な効果が出ていると言い難く、予算投入規模に見合った効果が表れるよう改善を図る必要がある」と指摘した。

 具体的には▽業務の棚卸やデジタル化で業務の削減効率化を進めるとともに、時間を要する業務を特定して適正人員を把握した上で、求める人材の要件や役割分担を明確にすること▽校長などが学校のマネジメントを適切に行えるように研修でマネジメント能力強化を図るとともに、支援員には求められる能力を備えた人材を配置すること▽まず市町村費負担事務職員を適正に配置した上で、不足が生じる場合に支援員を配置すべき――などと見直しを検討するよう求めた。

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