10月17、18日の2日間「自ら未来を拓き ともに生きる豊かな社会を創る日本人の育成を目指す小学校教育の推進」を主題に第59回東海・北陸地区連合小学校長会教育研究愛知大会が、愛知県産業労働センター、常滑市民文化会館で開催された。1200人を超える小学校長が参加し、学校経営上のさまざまな今日的な課題を解決すべく、校長に必要な創造性と指導性について研究協議を深めた。
1日目は、愛知県産業労働センターにおいて、分科会が開催された。参加者は学校経営、教育課程、指導・育成、危機管理、教育課題の5研究領域13分科会に分かれ、基調提案・実践発表を基に、各地区・各学校の実情について話し合い、研究協議を深めた。各分科会では、2つの実践発表がなされ、愛知県の小学校長の司会により参加型の研究協議が行われた。
中でも、第3分科会(評価・改善)では、渡辺まゆみ校長(岩倉市立五条川小学校)が研究の視点「教職員の資質・能力の向上に向けた人事評価の工夫」の下、人事評価制度は教職員を励ますものであり、その評価が意欲の向上につながる重要性を指摘した。そして、研究主題を「学校組織の活性化に向けた校長の役割と指導性」とし、定期面談のみならずチャンス面談の実施や、学校とのつながりの強さを可視化できる学校版エンゲージメントサーベイなどの取り組みを発表した。こうした取り組みが教職員の得意分野の把握を可能とし、教職員一人一人の資質向上を図る人事評価が実施できたことを成果としてまとめた。
また第8分科会(リーダー育成)では、鈴木正夫校長(豊川市立三蔵子小学校)が研究の視点「社会の変化に主体的に関わり、自ら磨き高め続ける管理職人材の育成」の下、現在の教員の年齢構成の現状を踏まえ、学校における組織力の向上には、ミドルリーダーを含めた管理職人材の組織的・意図的な育成が不可欠であると指摘した。そして、研究主題を「日常の取り組みにおける、次代の学校運営を担う人材育成の方策と校長のマネジメント」とし、その取り組みを提案した。具体的には、自己評価シートやチェックアンケートなどの活用により、常に本人に課題意識をもたせながら校務を遂行させたことで、管理職としての意識を高めることができた。また、計画的な面談活動により成功体験を意識化させたことで、自らの成長を自覚し、向上心をもって学校課題に参画しようとする姿勢を促すことができたと、その成果を挙げた。
2日目は常滑市民文化会館に会場を移し、開会式・全体会・記念講演・閉会式が行われた。
開会式で、都築孝明東海・北陸地区連合小学校長会長(幸田町立坂崎小学校)は、「今大会の視点である『校長の果たすべき役割と指導性』を踏まえ、校長の役割は、義務教育の意義と使命を強く自覚し、一人一人の子供が自らのよさや可能性を認識して、多様な人々と協働しながら、豊かな人生を切り開いていく力を育む学校経営の推進に尽力することである。そのために、校長が一層のリーダーシップを発揮し、経営ビジョンを明確にした創意と活力に満ちた学校経営のさらなる推進と充実が必要である。大会の成果が、子供たちに未来を生き抜く力を育成するための学校づくりに資することを願う」とあいさつした。
また、植村洋司全国連合小学校長会長は、「現在は、教育改革推進の時節である。特に『学校における働き方改革』は、まさに喫緊の最重要課題であり、学校における働き方改革のさらなる加速化、学校の指導・運営体制の充実、教師の処遇改善という3つの柱を一体的・総合的に推進するという答申の趣旨の理解は大切なポイントとなる。そして、一体感と凝集性の高い全連小が、先頭に立って、国を動かしていかなければならない。改めて、本大会の意義である『校長にとって最大の研修の場である』ことを踏まえ、学校の経営者として、新しい時代に求められる理念と指導性について、県を超えた『つながり』を広げ、深めるとともに、多くの『学び』を得て、各地区・各学校の新たな学校経営に還元することが重要である」と述べた。
最後に、室町臣彦大会宣言文審議委員長(一宮市立丹陽小学校長)が、「子供たち自身が夢と希望を抱き、豊かな人生を切り開いていく力を育む学校経営が重要であり、子供たちが自ら学ぶ価値を見いだし、確かな学力を身に付けることができる方向性を提示し、経営ビジョンを明確にした創意と活力に満ちた教育活動を校長の強いリーダーシップの下に展開することが求められている」と述べ、7点において大会宣言文を提案し、全員の賛同を得て採択した。
また、記念講演では、杉本昌隆氏が「将棋界における若い世代との接し方」と題し、師匠として育て上げた藤井聡太棋士をはじめ、これまで関わってきた若い弟子たちの実態を踏まえ、指導的立場として配慮すべき点を、楽しくユーモア溢れる話術で説明し、1200人の聴衆を魅了した。