愛知県小中学校長会副会長 中山 政彦
地域は、地域連携や地域学習などさまざまな教育活動において、昔から切っても切り離せないものです。ただ、似たような土地柄でも、学区によって雰囲気が異なることを教員であれば誰もが感じるところではないでしょうか。
そのような中で私が最近大切だと思っていることは、雰囲気のみを感じるのではなく、土地に根差した「風土」も感じ取ることです。
「風土」を検索すると、「人間が継続的に自然への働きかけを行い、自然が特殊な形となると同時に、この特殊化した自然を自分たちの営みに取り込んで形成される人間集団の性格や社会のつながり、文化など生活のすべてを総称して『風土』とよぶ」(農業農村整備情報総合センターHPより)とあります。
私が以前勤めていた学校は、20世紀初頭に廃川となった佐屋川が流れていた所にあり、いわば当時の川底に位置します。今も名残のあるかつての東堤防は尾張藩が17世紀に築いた御囲堤で、その東側には代官所も設けられていました。他方、西側は川に囲まれた輪中であり、尾張藩重臣が治めていた所です。かつてあった川を境に土地柄や作物、風習の違いを感じていたことを覚えています。
現任校の学区は多くが17世紀に開墾された新田で、学校のすぐ南にある川の堤防は高須街道と呼ばれ、名古屋城から岐阜の高須城を結んだ道になります。往来する旅人、先祖が開いた土地で農作業にいそしむ人々の姿。そんな風景が思い浮かび、この地を守り続けてきた人々の誇りや愛情を感じることができます。
もちろん、昭和や平成の時代には大きな集合住宅が建てられ、田畑が住宅地に変わり、多くの人が移り住むことで学区の雰囲気も変化しています。しかし、昔ながらの風土は脈々と息づいており、そこに住まう人々が何を想い、大切にしているかをおもんばかることが、地域を理解する第一歩ではないかと思うのです。
近年、学校と地域の連携・協働の姿として、目標・ビジョンの共有、地域と一体となって子供たちを育む「地域とともにある学校」への転換や、学校・家庭・地域が相互に協力し、地域全体で学びを展開する体制づくりなど、地域と一体となった教育の推進が叫ばれています。
私たちは地域の力を学校教育に生かす上で、まずは、土地の風土を十分に感じて理解を深め、その上で、地域とともに、子供たちの可能性を伸ばし、地域を支える人材を育てていければと思っています。
(愛西市立佐織西中学校長)