教師力・人間力―若き教師への伝言(83)職員の皆さんへ

教師力・人間力―若き教師への伝言(83)職員の皆さんへ
【協賛企画】
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 管理職になってから「職員の皆さんへ」というフォルダを作りました。職員向けの依頼、指示、注意喚起などを保存する場所です。今回依頼をいただいた「若き教師」だけが対象ではありませんが、そこから普遍的傾向のあるものを2つ抜粋し、若干の補足をして、原稿としました。私と一緒に勤務した気持ちで読んでいただけたら幸いです。

(1)その言葉、誰のため?言葉遣いは霊長類最高のものであってほしい。

 近隣の学校での会議で、PTA役員から学校への要望、意見を聞く機会がありました。教職員からの生徒に対する不適切な言動についてでしたが、該当の教職員は「感情的になってしまった」と謝罪をされたそうです。そこから教職員のストレスについて話題が展開していきました。ストレスが起因して言動が不適切になるということは理解できませんが、「口調が荒くなるほど本気になっている」ということは私も身に覚えがあります。この本気は誰のためかと言うと、自尊心を保ちたい自分のためではなく、導きたい生徒のためであるべきです。何とかしたいと思っていても暴言と捉えられたら何の効果もありません。命令調の乱暴な言葉遣いが許されたのは、人権を軽視してもとがめられなかった時代のことです。指導の本意が生徒本人やその保護者に理解されるために、その生徒がどのような状況か読み取り、こちらの思いを正しく伝えるためにはどんな言葉が適切か難易度も含めて考え、指導する必要があります。また、注目度を上げるために多くのマスメディアでは、わざと乱暴な言葉の使用が目立ちますが、学校には程度の下がった言葉遣いに逆らい、生徒の言語環境を整える責務があると考えています。

(2)タイミング、バランスを意識すると、同じエネルギーでも得られる結果が変わる。

 新規採用から5年目、私なりにタイミングを意識して心掛けたことがあります。生徒指導の場面で、ある生徒への初発の言葉です。「今、話(素直に)聞けるか?」何度も失敗してこの言葉にたどり着きました。どれだけ正しく当たり前のことを言っても、相手に伝わらなければ意味がないということを私なりに学習した結果です。タイミングと類似することで順番も意識すべきことです。後回しにすると取り返しがつかないこと、後回しにしても問題ないこと、後回しにした方が良いこと、区別して取り掛かることが自分自身を助けます。

 続いて、バランスの話題です。英語科の教員として、生徒の到達目標について悩む機会が多くありました。英語教育の目標は学習者にとってさまざまであるため、広く多くの学習者たちが目標とすべきことは常に念頭に置きながら、バランスを意識した授業計画を心掛けました。教科で本来身に付けるべき能力とその場しのぎの受験英語を同等に扱うことはできませんが、バランスを意識してどちらも扱うことが学習者の要望に応えることになると結論付けました。生徒指導で相反する「導くこと」と「寄り添うこと」についてもバランス、タイミングが大切と考えています。

 機会をいただいたので年長者からの言葉を若い先生方へ届けましたが、若さはそれだけでご自身の味方になります。そこに経験を重ねることで自分のスタイルを確立することにつながります。経験とともに老いてしまわぬよう、心身ともに若さを保つことは何よりも大切と感じます。

 最後にもう一つお伝えしますが、教員という職業の暗い側面が過度に注目されていますが、感動で泣ける場面の多さは他の職に負けません。長期展望に立つと、これほど幸せな職業は他にないと思います。誇りと自信と感動を忘れないでこの仕事を楽しんでもらいたいと思います。

 (永瀬孝明・日進市立日進東中学校長)

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