2年前、新潟市立中学3年の複数の生徒が修学旅行で訪れた美術館で現代アート作品を破損し、新潟市は12月3日、美術館を所有する新潟県十日町市に学校事故賠償金として約674万円を支払う方針を明らかにした。同日開会した新潟市議会に提案予定の補正予算案の追加案件として計上された。
新潟市教育委員会によると、2022年4月、市立中学校の修学旅行で、十日町市の越後妻有里山(えちごつまりさとやま)現代美術館MonET(モネ)に訪れた複数の生徒が、クワクボリョウタ氏の「LOST #6」、カールステン・ニコライ氏の「Wellenwanne LFO(ヴェーレンヴァンネ エル・エフ・オー)」の計2点を破損した。「LOST #6」は鉄道模型から放たれた光で影を投影する作品で、「Wellenwanne LFO」は水面を振動させて波紋をスクリーンに投影させる作品。2作品はその後、修復され再公開されている。
当時、市教育長や中学校長らが十日町市に謝罪。十日町市は被害届を出し、警察によって捜査されたが、破損した詳しい経緯や加害者は特定されていない。新潟市教委による聞き取りでも、生徒たちは「故意ではなかった」と話していたという。
新潟市と十日町市は協議を重ねてきたが、新潟市が損害賠償金を支払い、和解する方向で合意。新潟市教委は「教育活動中に起きたことなので市に責任があるとの結論に至った」と説明しており、保険などを適用して当事者や保護者には賠償を求めない方針という。
当時、生徒たちが作者に対して手紙で謝罪の意思を伝え、クワクボリョウタ氏が「誰でも若いうちは、ちょっとした失敗をするもの」とツイートしたことも話題となった。
十日町市は世界最大規模の野外アート展「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」を、2000年から開催している。同美術館MonETは、12年開館の越後妻有里山現代美術館キナーレをリニューアルし、21年に開館した。