「公財政支援の充実」さらに強調 高等教育特別部会で答申案

「公財政支援の充実」さらに強調 高等教育特別部会で答申案
高等教育の在り方についての答申案を巡り議論した特別部会=オンラインで取材
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 2040年以降を見据えた高等教育の目指すべき姿を検討している、中教審の「高等教育の在り方に関する特別部会」(部会長・永田恭介筑波大学長)の13回目の会合が12月4日、文部科学省でオンラインを併用して開かれ、答申案が示された。少子化が急速に進む中、今後の高等教育が目指す姿として「我が国の知の総和の維持・向上」を強く打ち出し、質の向上や規模の適正化、アクセスの確保の3つを柱に、再編統合の推進や縮小・撤退への支援を含めた具体的な方策が示された。中間まとめに比べて特に公財政支援の充実の必要性が強調されたが、委員からは「もっとお金をかけないと、教育の質が向上しないことを明確に示すべきだ」などといった意見が相次ぎ、次回に改めて修正案が示されることになった。

 答申案では、急速な少子化で2040年には大学進学者が21年に比べおよそ27%減の46万人になることを見据え、持続可能な活力ある社会の実現に向けて高等教育が目指す姿として「知の総和の維持・向上」が必須であると打ち出された。そのために「質のさらなる高度化」「規模の適正化」「アクセスの確保」が必要だとして、具体的な方策が示された。

 「質のさらなる高度化」については、高校段階での文理横断・文理融合教育の推進を含めた高大接続を踏まえた大学入学者選抜の改善などが示された。「規模の適正化」については、一定の学士課程定員の規模縮小をしつつ、質の向上と連動して規模縮小を実施する大学など、意欲的な教育・経営改革や縮小への支援が示された。「アクセスの確保」については、地方を中心に入学者の減少による学生募集停止が相次ぐ中、地域の人材育成 ・アクセス確保について議論を行う協議体(地域大学等構想推進プラットフォーム、仮称)の構築などが示された。

 こうした高等教育改革を進める上で、答申案では高等教育に対する投資は未来への先行投資だとして、「大胆な投資を進め、わが国の成長のためにさらなる強化を図っていくべきである」と強調し、中間まとめより公財政支援の充実をさらに強く打ち出した。短期的なものとして十分な国立大学法人運営費交付金などの確保や、社会からの寄附充実や大学債の発行促進に向けた取り組みの強化を盛り込み、長期的なものとしては新たな財源確保に向けた検討が必要であることを打ち出した。

 この答申案に対し、委員からは公財政支援を巡る記述などへの意見が相次いだ。両角亜希子委員(東京大学大学院教育学研究科教授)は「就学支援新制度で高等教育への支援は大きく増えて、個人支援が増えたのはよいことだが、大学教育の質を上げるためのお金は入ってこない。機関補助と個人補助のバランスが悪く、質の向上などを達成する上で配分の在り方を見直す必要があることを書き込む必要がある」と指摘した。

 こうした意見を踏まえて永田部会長は「教育研究の質の向上に予算は必要であり、もっとお金をかけないといい教育はできないことは明確にしたい。日本の高等教育の価値が高いとの認識はこのメンバー内で共有されていても、社会全体にはない。こうした負担を誰がするかといった議論が必要であることは示していきたい」と述べ、次回会合に向けて答申案を修正した上で議論を続けることになった。

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