(読者の窓)教育実習

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 私が大学3年生のとき、初めての教育実習で配属になったのは、小学校の1年生のクラスでした。

 「先生」と呼ばれて振り向くたびに、肘が1年生の顔に当たりそうになりました。1年生の教科書を開くと、ほんの少しのことしか書いていません。これを1時間かけてどうやって教えるのかと途方に暮れました。それでも、何とか授業をしようと、睡眠時間を削ってつくった教具にも、これといった反応がなく落ち込むことばかりでした。

 ある日の昼休み、女の子たちが私を呼びに来ました。その2人に手を引っ張られていくと、いつものアスレチックではなく、教室と運動場とを分ける垣根に着きました。

 2人は「こっち」と言って、こんもりした垣根の木の下に潜っていきました。こんなところに入って叱られないかなと思いながらも、私はしゃがんで手を地面につき、枝をくぐって木の下に入り込みました。すると、そこは大人がぎりぎり入れるくらいの薄暗い空間がありました。「プラネタリウムだよ」子供たちが上を指さしました。窮屈な体勢のままゆっくり顔を上げると、木の葉のすき間から、外の明るい光がちらちらと漏れてきました。「本当だ」と、思わずつぶやくと、2人はにっこりして、「内緒だよ」と言いました。

 学校に教育実習生が来る時期になると、今でもこのときのことを思い出します。柔らかな子供たちの感性に触れて、心が動く体験をたくさんしてほしいと願わずにはいられません。

 (立川恵理・豊川市立代田中学校長)

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