今年の夏休みを振り返ると、まず思い浮かぶのは、パリオリンピック・パラリンピックではないでしょうか。世界各国の選手が最高の舞台でしのぎを削っていました。そして、感動的なシーンがたくさんありました。
スポーツを見ると心が動きます。それは、それまでの努力の積み重ねの上に、選手が全力で自分の力を出し切ろうと頑張っているからではないでしょうか。人は、スポーツだけでなく、芸術でも学習でも、全てにおいて努力し頑張ることでしか進化成長できません。意識しているしていないに関わらず、心の奥底でこのことが分かっているので、人は頑張っている姿を見ると自然と心が動かされるのだと思います。しかしその一方で、世の中には、人との比較や競争の勝ち負けばかりを気にして、人を上に見たり下に見たりしている人がたくさんいます。
大リーグで活躍したイチロー選手は、〝結果よりも大切なこと〟としてこう語っています。「打率やヒット数は人との比較です。僕以上に打っている人がいればその人が一番になる訳で。僕が打てなくたって、相手がもっと打たなかったら僕が上にいっているかもしれない。だから、結果は相手に左右されてしまうもの。それよりも大事なことは自分の力を出しきったかどうかです。また、そのための準備をきちんとしたかということ。人との比較で一番とか二番とかよりも、自分の力を出す準備をしっかりして努力したかが大切。これに尽きる」。一流の人にとって大切なことは、自分が進化成長するために、自らの目標に向かって努力し頑張り続けられたかどうかであり、つまりそれは、自分に負けなかったかどうかであると思います。
これからの子供たちが、人との競争に振り回されず、自分の成長にこだわって前向きに努力する、自分に負けない子供に育ってくれることを願ってやみません。
(堀嘉和・名古屋市立千種小学校長)